AERA3月8日号の特集「中高一貫の真価」から
AERA3月8日号の特集「中高一貫の真価」から
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「試された1年」といっても間違いではない。コロナ禍で様々な対応が迫られるなか、厳しい中学受験も終了した。AERA 2021年3月8日号は「中高一貫の真価」を特集。工夫を凝らし、逆境に立ち向かった中高一貫校を追った。

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 試験監督の教員はもう一度じっくり、マニュアルに目を通す。設営担当はアクリルパネルの置き漏れがないか、教室チェックに余念がない。受験生や車両の誘導担当は頭のなかで動線をシミュレーションする。

 1月10日。入試が行われる中高一貫校の栄東は、朝から緊張に包まれていた。目的はただひとつ。一人の感染者も出さず、無事に入試を終えるため、だ。

 コロナ禍での今年の中学入試が終了した。首都圏では1月10日に埼玉、20日に千葉、2月1日に東京、神奈川で解禁。冒頭の栄東は先陣を切って入試を行うため、関東全域から受験生が集まる。受験者総数は例年1万人を超え、初回の入試は6千人に及ぶ。

 本来なら嬉しいはずの膨大な受験者の数。が、今年は不安の種になった。入試広報センターの稲田昭彦教諭は言う。

「昨年4月当初から6千人来校することを想定し、密を避けるにはどうしたらいいか教員みんなでアイデアを出し合いました」

1月10日に行われた栄東の入試では、受験生たちの机にアクリル製の仕切りを設けた(c)朝日新聞社
1月10日に行われた栄東の入試では、受験生たちの机にアクリル製の仕切りを設けた(c)朝日新聞社

入試で初めて学校訪問

 例年、初日は本校舎の他に同法人の埼玉栄高校、栄北高校の3校舎で行っているが、今年はさらに入試日を10日と12日に分散。それでも本校舎は最寄りの東大宮駅からの道のりが密になる可能生があるため、9時と10時の二つの時間帯を設けた。

 教室は例年より人数を2割程度減らして間隔を空け、全員分のアクリルパネルを机に設置。受験生に配った携帯型の除菌スプレーは、この状況で足を運んでくれたことに対する、ささやかな感謝の気持ちだ。

 息子が栄東を受験した東京都杉並区在住の母親(41)は、埼玉でもう1校を受ける予定だったが感染リスクを避けるため取りやめたと言い、こう続ける。

「ネットの説明会はありましたが、実際に学校見学してみないとわからないことも多い。入試が、初めての学校訪問だったということもありました」

 コロナの影響で経済面や十分な勉強時間が得られないことなどから、受験生が減少すると見られていた今年の中学受験。ふたを開けてみると、私立・国立中学受験者数は、5万50人と昨年より約650人増加し、受験率も昨年の16.62%から16.86%に上昇した(首都圏模試センター調べ)。

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