佐藤:保護者の方は「うちの子は、どこの学校に入れたらいいですか?」みたいな答えを、どうしても求めてしまうと思います。もちろん、「ここがいい」と信じられたらラクだとは思うのですが、私は危険だなと思っています。「隣の子には合うかもしれないけどうちの子には合わない」が、学校選びでは本当に起こりうる。まずは自分のお子さんと学校との「掛け合わせ」がどうかですよ、ということはしっかり考えた方がいい。

 いまは各学校で、たとえば「思考力」「頑張り抜く力」など「どんな資質能力を育てたいか、それを身につけるためにどんな教育をしていくか」を描いたグランドデザインを作り、それに基づいて総合的な学習の時間や各授業を作る方向になっていて、ホームページなどに載せているところも多いです。そこで「何に力を入れている学校なのか」を確認してみることも重要です。「育てたい資質能力」が子どものキャラクターと合わなかったら、そもそも難しいと思います。

■子どもの「勘」が重要

 さらに、中高一貫校の強みにもなる「6年間というスケール」を、本当にちゃんと生かせている学校か、ということも重要です。たとえば東京の豊島岡女子学園や、公立の両国や富士などが高校入試を廃止する流れは、「6年間でできる最大のパフォーマンスをしよう」という決意の表れだと思うので、それをきちんと持てているかどうかを確認することもポイントではないかなと思います。

小川:私も毎年、「うちの子はどの学校がいいですか?」と聞かれるんですけど、それに対してまず、「絶対に行かせたくない学校はどこですか?」と問い返すことにしてます。「家庭としての学校選択の基準は何か」を突き付ける。まず考えてくださいと。

 考えてきてくれたら、じゃあ次は「現実的にお子さんが6年間通うことを考えたとき、通学圏内で妥当な学校の候補はいくつありますか」と。そこでまた絞られてくる。続いてカリキュラムなどを見て、「ここはうちの子はぜったいに違うな」など、親の感覚で「良さそうだな」をある程度絞る。そのうえで、やはり「お子さん自身をその学校に連れていきなさいよ」と伝えます。

 最後は、とくに小学生の場合は、その場の「におい」で決まるんです。理屈じゃない。その建物に入ってみたときにお子さんが「いい感じ」だったらいいんです。親から見て条件がそろっていて素敵と思っても、子どもが中に入ってみて「んん?」と思ったらだいたい違う。最後は、子どもの勘を信じる。

 たしかに今年は、コロナでそれが使えなかったからとても難しかった。でも、中学入試とは結局、その学校の学びに合う子に入ってもらうためにやるんです。そのうえで、学校に入ってからの6年間で何をめざすか。社会に出て活躍できる、自分自身の力を信じて生きていける子たちを送り出そうと、これは先生たち全員が思っていること。コロナ禍は、そんな当たり前のことを、いまいちど考える機会にもなっていると思います。

(構成/編集部・小長光哲郎)

※AERA 2021年3月8日号

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