『私の夢まで、会いに来てくれた』は切なく、悲しい本だ。しかし、胸をえぐられる一方で、読後には悲しみの先に見え隠れする小さな光の存在にも気がつく。希望の光を灯しているのは、夢で会う亡き人だ。

 今回、単行本を文庫化にするにあたり、語り手の方たちに連絡を取ったところ、「忘れないでいてくれてうれしい」「本の帯にあった『何年経っても忘れない』の言葉が遺族の思い」と話してくれた人もいた。

 私たちは誰もが亡くなった人の思いを抱えて生きている。夢はそのことを思い出させてくれるタイムマシンのような存在だ。死者が生者を支えてくれているからこそ、私たちは未来を生きていけるのだろう。

金菱清(かねびし・きよし)
関西学院大学社会学部教授。社会学博士。1975年、大阪府生まれ。2005年、東北学院大学講師。07年、同大准教授、14年、同大教授。20年、関西学院大学に赴任。著書に『震災メメントモリ』(新曜社)、『震災学入門』(ちくま新書)、『災害社会学』(放送大学教育振興会)、編著に『悲愛』『呼び覚まされる霊性の震災学』(いずれも新曜社)など。