──イギリス南西部、ジュラシック海岸で知られるライム・レジスでの撮影はいかがでしたか? デッサンを学んだり、寒さの中海岸での化石採集などを実体験し役に備えたそうですね。
「撮影の数カ月前にライム・レジスに仮住まいしたの。プロの化石採集の先生について、アンモナイトを探したり、採集した石を磨くことを習った。偶然にも珍しい魚の化石を見つけたの。先生に驚かれたわ。それを磨いて、シアーシャに誕生日プレゼントにあげたの。スタッフの数は少なかったけれど、監督は逆にそれを気に入っていたようだった。だから細かくいろいろ指示する必要もなかった」
──あなたは役選びに慎重ですね。女性の生き方を様々な視点や手法で描く作品への出演が主流で、大作に偏ることもない。今回の作品もハリウッドの大作と比べて現場は大変でしたか?
「低予算の映画だから、長い時間をかけた撮影もできなかった。時には日射量が足りないと思えば、逆に日が照りすぎている日もあって大変だった。そういった低予算映画に付きまとう問題点が常にあったの。全員が助け合った。偉大なスタッフがいてくれて助かった。監督が一人ひとり抜擢した人たちで、素晴らしかった。それが映画全体の雰囲気、出来に大きく貢献したと思う」
俳優一家に生まれ、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞など数多くの賞を獲得しているケイト。3月15日には本年度アカデミー賞候補が発表となるが、この作品が有力という下馬評だ。
(在ロンドン 高野裕子)
※週刊朝日 2021年3月19日号