指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第60回は、選考会が近づくこの時期に大切なことについて。
【写真】五輪会場となる東京アクアティクスセンターで練習する選手たち
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五輪代表選考会を兼ねた4月の日本選手権まで1カ月を切ったこの時期に一番大切なのは、自分の目標、課題を忘れずに、ぶれない気持ちで自信を持って日々の練習に臨むことです。
試合でどんな泳ぎがしたいか、自分の中でイメージを持つ。その泳ぎを実現するための課題を見つけて、練習で一つひとつクリアしていく。その積み重ねの集大成がレースといえます。
五輪イヤーが明けて、1月、2月、3月と代表選考会が近づく中、各地で試合が開かれます。目標のタイムを出して自信を深める場合もあれば、ライバルが好調なのを知って焦ることもあります。試合が近づくと感情の起伏が生まれて、目的がぶれたり、自分自身はこうあるべきだというところが乱れてしまったりすることが多々あります。
そんなときどうするか。
月並みですが、これまで続けてきたことを変えずにやることです。日々の練習で見つけた課題をもう一度確認して、それをクリアするための練習を確実に実行していく。競技会のために練習しているので、もちろんライバルは意識せざるをえません。何秒で泳ぐとか、だれかに勝つということが目標になるわけですが、自分がこれまでの練習で考えてきた泳ぎを、きちんと体で表現することが最も大事だと思います。
2008年北京五輪と16年リオ五輪の前、脳神経外科医で日大名誉教授の林成之先生を招いて代表選手に話をしてもらいました。示唆に富む様々な話をしていただきましたが、印象に残る話の一つに「得意技でライバルを圧倒する」があります。練習で目指してきたイメージ通りの泳ぎをレースで実践することが、「得意技」といえます。