ネットニュース編集者で、メディアの連載も多数抱える中川淳一郎さん。2020年、47歳で「セミリタイア」し、佐賀県唐津市に移住した。現在発売中の週刊朝日MOOK『定年後からのお金と暮らし2021』では、どのようにしてそれを達成したのか、赤裸々に語ってもらった。
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九州の玄関・博多から高速バスで90分。日本百景の一つ・唐津湾に接する佐賀県唐津市は、呼子の「活イカ」や唐津焼などで知られている。この街に東京から移住したのが、中川淳一郎さんだ。
大学卒業後、博報堂に勤め、退職後はライター・編集者の仕事を未経験の状態で引き受け、フリーランスとして働く。小学館でニュースサイト「NEWSポストセブン」の立ち上げなどを提案し、ウェブメディアを黎明期から支えてきた。だが47歳を迎えた昨年、「セミリタイア」としてキャリアに区切りをつけ、東京を離れた。
「年に364日、仕事をしてきました。年120日休みがある人に換算すれば、60歳の人と同じぐらい働いたと思うんです。それに競争の激しいフリーランスの世界では、50代になると、下の世代から疎まれるかもしれない。若手に『要らない人だ』と思われるのは怖い。そう思われる前に辞めたかったんです」
こうした理由で、2013年、40歳の時にセミリタイアすることを決意した。
「当時は『東京五輪が終わったらアメリカに住もう』と思っていたのですが、コロナでそれもできなくなってしまい、どうしようと思っていた時に仕事の友人から唐津を勧められました」
唐津には「昔、仕事で一度行ったことがあるだけ」という中川さん。しかし引っ越してからは「魚が安くてうまい」「春から釣りが楽しみ」「人も親切で受け入れてくれる」など、良い面ばかりが目についた。
「フェイスブックに写真を投稿しても、顔つきが穏やかになった、とよく言われます(笑)。競争から降りて、人間関係からも解き放たれました」