■先人が周りにいなかったからこそ、一番手になれた
今は自身が執筆する約40本の連載をメインの仕事とし、それ以外の編集の仕事はすべて後任者に引き継いだ。そのために中川さんは、5年前の15年にはすでにセミリタイアの意思を関係者に伝え、後戻りできないよう背水の陣を敷いていた。
「そうすると撤回できない気持ちになるんですよね。周りの人も最初は『またまた』と笑うのですが、ずっと言い続けることで、『本気で辞めるつもりなんだ』と理解してくれました」
セミリタイアのモデルケースとなるような先人は周りに誰一人いなかった。「でもだからこそ、一番手になることができる」と話す。
「フリーライターを始めたときも、広告代理店出身の同業者はいませんでした。ネットニュースがまだあまりなかったころ、出版関係者が嫌がる無料の記事配信を提案しました。こうしたキャリアで地方移住をした人は珍しいので、いまも自治体からPRの仕事がきたりします。みんなの逆を行くことで一番手となり、仕事をもらえるのです」
とはいえ、いくら仕事があったとしても気になるのがお金の問題だ。
「定年を迎える方には、今からでもいいから浪費をやめてくださいと言いたいです。私は20代から浪費をやめていたから、47歳でセミリタイアができました」
中川さんは博報堂にいた4年間で1300万円を貯金した。この年齢までにこの金額をためようといった具体的な目標はなかったが、いつ会社を辞めてもいいよう、貯金残高が減らないように通帳を気にしていた。
「臆病なんです。豪快で見栄を張る人生よりもいいと思います」
では、スムーズな定年を迎えるために、どのように節約をしていけばいいだろうか? その一つが自炊だ。自炊をテーマにした著書では、「栄養面や免疫を高めるという観点から考えると自炊をし、野菜も大量投入して数多くの食材を摂った方が優れているのは自明である」と喝破した。そして何より、自炊は安い。