「下戸市場が新たな成長産業となる可能性は高い」と考えた藤野さんは、下戸市場を「ゲコノミクス」、お酒を飲めない・飲まない・飲みたくない人を「ゲコノミスト」と命名し、19年6月にはFacebookグループ「ゲコノミスト(お酒を飲まない生き方を楽しむ会)」を開設。下戸の気持ちを理解したいノミスト(飲める人)も含め、会員数は約4700人に上る。
もともと健康などの観点から注目されていた下戸市場が、コロナ禍で飲酒量が減るという現象が起き、ますます注目されているというわけだ。冒頭の男性のようにもともとはよく飲んでいたノミストが、飲まない習慣を身につけたことで下戸市場の新規顧客となったケースもある。
「欧米ではソバーキュリアス(Sober Curious=体質と関係なく飲まない人)がブームになり、日本でも『卒アル(アルコールを卒業)』が増えている。飲食業界も今後ゲコノミスト向けの商品開発がより重要になるのは間違いない」(藤野さん)
■66万円の緑茶が完売
1本(750ミリリットル)税込み66万円。年代物のワインの話ではない。緑茶だ。驚くことに、完売……。
販売するのは、ボトルに入った高級茶のトップブランド「ロイヤルブルーティージャパン」。同社が扱うボトルドティーは最も安いものでも1本4千円台。しかし会長の佐藤節男さんによれば「コロナ禍でもネット注文は好調で、2月は前年同月比110%の売り上げ。ワインはお酒を飲む人しか飲まないが、お茶は飲まない人も飲む」。
従来なら「お酒」が当然という場所にも導入されている。お酒をたしなみながら寿司をつまむのがこれまでの定番だった名古屋のある寿司屋では、33万円のお茶を含むペアリングの会の予約を1人8万8千円で募ったところ、30分で埋まった。
「ナイトクラブやホストクラブからの注文も増えています。お酒を飲まないお客さんに烏龍茶やコーラを出すより、高級茶の方が喜ばれる。従業員も酔わずに済む。飲む人も飲まない人も、みんなハッピーなんです」(佐藤さん)