「震災前の姿に戻るという目標でなく、人口減を受容しつつ、新しいまちづくりを目指す覚悟、決意を共有しながら進んでいくモデルとして興味深い」
■「つなぐ」「ハブ」が大切
こうした試みが成功するカギは、「新旧の住民が協力関係を結べるかどうか」だと指摘。市民をつなぐ役割を持つNPOなどの存在、飯舘村でいえばMARBLiNGのような「ハブのような役割」を果たす存在が重要だという。
大滝さんは、飯舘村に息づく発想の豊かさの一例として「若妻の翼」をあげた。1989年から5年間実施された村単独事業だ。40歳代までの女性に10日間、欧州旅行をしてもらった。5年で91人が訪欧、自己負担が10万円だった。欧州で自由や自立を体得してもらうことが目的だったこのプロジェクト。一部で「生意気な嫁を育てた村」と呼ばれたが、時代の潮流に敏感な風土が、村に根付いている。そんな伝統と知恵を掛け合わせ、新たな村づくりに立ち向かう。(ジャーナリスト・菅沼栄一郎)
※AERA 2021年3月29日号