「飯舘村忠犬ハチ公像維持会」は新旧の村民が起ち上げた。三瓶政美会長(右)と松本奈々副会長(左)、後ろが塚越栄光事務局長(撮影/菅沼栄一郎)
「飯舘村忠犬ハチ公像維持会」は新旧の村民が起ち上げた。三瓶政美会長(右)と松本奈々副会長(左)、後ろが塚越栄光事務局長(撮影/菅沼栄一郎)
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AERA 2021年3月29日号より
AERA 2021年3月29日号より

 福島・飯舘村は震災前と比べて人口が2割強に減るなど、震災10年で生活環境が一変した。そんな中、100人を超える移住者が村民たちと新たな村づくりに挑みはじめた。AERA2021年3月29日号の記事を紹介する。

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 震災以来、福島・飯舘村では様々な団体が調査、研究活動を展開してきた。

 ボランティアや研究者らが地元農家と震災直後に起ち上げたNPO法人「ふくしま再生の会」は、コミュニティー再生や村内の放射線測定、農畜産業再生などに力を入れてきた。地元農家らが出資した「飯舘電力」は太陽光で発電と植物生育の一石二鳥を狙うソーラーシェアリングなどを開発。ほかにも東京大学農学部の研究者が、放牧地の水飲み場にカメラを固定して、牛の健康状態を診断するシステムなどの開発を試みる。

「瀬戸内国際芸術祭」など現代アートをまちづくりに生かす活動を展開する北川フラムさんも、実験場に参入する予定だ。2年ほど前に十数人のアーティストと村内を視察。先月のオンラインフォーラムでは、「飯舘にはやはり、牛が大切。アートがどう農村と関われるか。村人が参加できる芸術祭を具体化したい」と話していた。

 そうした移住者らとの共同作業を見守るのは三瓶政美さん(72)。「何でも一緒にやろう、という気持ちが大事だね」と言う三瓶さんは、村の特別養護老人施設「いいたてホーム」の元施設長で、全村避難中も100人を超えるお年寄りらと村を守った経験がある。

 そうした「留守番」中に、渋谷の商店街から寄贈された「忠犬ハチ公像」を維持する会の会長も務める。副会長は先の松本奈々さんで、事務局長は「100人目の移住者」だった塚越栄光さん(45)だ。新旧住民の3人が相談して、ハチ公には、「村民(主人)の帰りを待つ」と同時に「新旧村民の出会いを見守る」役割もお願いすることにした。

 東北各地の被災後のまちづくり事情に詳しい大滝精一・東北大学名誉教授は、こう指摘する。

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