大学4年時にはビーチジャパンカレッジ(全日本大学選手権)で創部初の栄冠をもたらした。2019年には坂口佳穗(マイナビ/KBSC)とペアを結成。国内ジャパンツアーのファイナル大会でも最年少優勝を果たした。現在は、東京オリンピック出場を狙う有力チームの一角となった。村上を見初めた佐伯の目に狂いはなかった。

 現在、坂口・村上組のスーパーバイザーを務める佐伯は村上のプレーヤーとしての可能性をこう話す。

「今はまだ、本能のままにやっている部分がある。私も現役時代はどちらかというと、そういうタイプでした(笑)。いい時はいいけど、悪い時は考えが足りない分、収拾がつかなくなることがあります。自己分析が必要ですし、そういう面ではまだまだ伸びしろがあります」

 本能のままに勝利を追い求める──。それは村上自身も自覚している。

 普段の性格は「だいぶのほほんとしている」と言い、パートナーの坂口も「ビッグベイビー」と表現するほどだ。それが、ひとたびコートに入ると「自然にスイッチが入る。負けたくない」と言う。つまり、スイッチが入った瞬間、表情や行動が豹変する。

「小さい頃から厳しい環境でやってきたので、体育館に入ったら身体がピリッとなる。それの習性が今でも残っていますね。そういう切り替えは、自分の近くにいる人しかわからないと思います(笑)」

「アスリートにとって『本能的な部分』はとてもは重要」と佐伯は話す。村上自身も心のどこかに「勝負スイッチ」があることは薄々気づいていた。ただ、厳しいバレーボール環境で育ってきたからこそ、勝負にこだわることはあまり表に出したくなかった。

「大学時代に組んでいたパートナーに試合が終わった後、しゃべりかけづらいって言われました。普段からすごく仲が良かったんですけど、気まずくなりました(笑)。それまでは自分で気づかないようにしていたというか放っていたんですけど、そう言われて自分が勝負にこだわっていることを認めました」

 村上の豹変ぶりが見て取れるのは、やはりサーブのシーンだろう。研ぎ澄まされた空間を味方につけるようにして流れるように打ち込んでくるジャンピングフローターサーブは角度がある。まるで砂に吸い込まれていくような鋭いサーブ。他のトップ選手たちも脅威を感じており、世界でも屈指のサーブ力を持つ石井美樹(荒井商事/湘南ベルマーレ)・村上めぐみ(オ―イング)組のサーブ力と「同等」と評価する選手もいる。

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村上が影響を受けた選手は?