※イラストはイメージです
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 亡くなった配偶者の父母やきょうだいら親族との関係を断ち切るための「姻族関係終了届」。ワイドショーで繰り返し特集され、「死後離婚」の通称で一時は大きな注目を集めた。だが、後戻りできない同制度はトラブルも多いという。

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「2015~17年ごろには、『死後離婚を考えている』という相談が年間数十件はありましたが、20年は数件にとどまりました。今年もまったくありません」

 こう話すのは夫婦問題カウンセラーの高草木陽光氏だ。一時期、急増した死後離婚に関する相談が近年、急減しているというのだ。

 減少傾向にある一つの要因は、認知度の向上だ。亡くなった配偶者の親族との関係を終わらせる死後離婚は、役所で姻族関係終了届を提出するだけでできる簡単なもの。関係を断ち切られる姻族の了承などは不要で、姻族関係終了の通知もない。姻族に知られることなく、本人の意思だけで実行できるのだ。専門家を通じた届け出なども不要なため、「メディアで盛んに特集された結果、カウンセラーに相談する方が減った」(高草木氏)と考えられる。

 もう一つの要因は、簡単な手続きにもかかわらず、後戻りできない制度上の特徴にあるという。

「離婚であれば復縁が可能ですが、死後離婚したら元に戻すことはできません。夫を亡くした女性が、姻族関係終了届を提出して義父母との関係を断ち切ったら、その義父母と養子縁組を結ばない限り、親族には戻れない。おまけに、自分の子供と義父母の関係は切れません。だから、私は皆さんに『しっかり、お子さんと相談してから決断してください』と念押ししています」

 こう話す夫婦問題カウンセラーの高原彩規子氏は、死後離婚の経験者だ。1994年に結婚したが、夫の不倫が発覚して08年から別居。離婚を考えるなか、夫が食道がんを発病。一時期回復に向かったが、11年に夫を亡くした。死後離婚を決めたのはその直後だった。

「夫の遺品から信じられないぐらい若い女性と男女の関係にあったことがわかったんです。借金してその女性に多額のお金を渡していたと思われるメールのやりとりもあった。夫の支払いでその女性に携帯電話も持たせていた。それなのに、私と高校生になる娘に残されたのは借金だけ。夫の姓のまま生きたら、夫の生き方を容認するようで耐えられなかったので、姻族関係終了届を出して姓も変えようと決めました」

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