帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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※写真はイメージです (GettyImages)
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「老いと孤独について」。

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【鰥寡孤独(かんかこどく)】ポイント
(1)私は家内に先立たれたが、だから孤独とはいえない
(2)老いることで孤独が深まるとの考えは間違い
(3)仲間が少なくなるが、その量の不足は質でカバー

 ある学術集会の懇親会で、私と同年輩の方が近づいてきて、こうおっしゃるのです。

「私は実は昨年、妻に先立たれました。いまだにさびしくて仕方がありません。仏壇の前で妻の位牌(いはい)に語りかけながら、晩酌をしている次第です。先生も奥さまを亡くされていますが、孤独のさびしさはどのようにしてまぎらわせていらっしゃいますか」

 それに対して私は、

「いやあ、私は女友達も男友達もたくさんいますから、さびしくはないですよ」

 と正直に答えました。すると、彼は黙って立ち去ってしまいました。言い方がよくなかったかもしれません。悪いことをしました。

 私も亡くなった家内のことを思わないわけではありません。病院の私の部屋には3体の観音像と共に家内の写真を飾っていて、毎朝、延命十句観音経を唱えています。

 しかし、だから私が孤独を感じているかというと、そういうことではないのです。

 孤独という言葉は儒教の四書のひとつ『孟子』に以下のように出てくることから生まれたのだそうです。

「老いて妻無きを鰥(かん)と曰(い)い、老いて夫無きを寡(か)と曰い、老いて子無きを独(どく)と曰い、幼にして父無きを孤(こ)と曰う。此(こ)の四者は、天下の窮民にして告ぐる無き者なり」

 四者を合わせると鰥寡孤独になるのです。この四者は窮民として救済される対象でした。私は鰥(やもお)にあたるので、鰥寡孤独の資格は十分です。

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