年齢を重ねるにつれて、家内だけでなく、1人、2人と仲間が脱落して少なくなっていきます。しかし、気功の仲間は老若男女、まだたくさんいますし、晩酌の相手にもこと欠きません。新型コロナウイルスの自粛をものともせず、毎晩のように会合の予定を入れています。

 本誌で対談したことのある上野千鶴子さんが、最近『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)という本を出して話題になっています。上野さんはこう言います。「ひとり暮らしは『孤立』ではない、ひとりで死んでも『孤独死』ではない」(同書)。だから「在宅ひとり死」ということばを作ったそうです。さすが、上野さんですね。

 老いることによって孤独が深まるという考えは間違いです。

 少なくなってしまった昔からの仲間は、男にしても女にしても、魂が成熟して味わいを増してきています。特に女性の色気は年とともに深まるのではないでしょうか。つまり、量の不足は質でカバーされるわけです。

 さらに死が近くなるにつれ、先に逝った仲間たちが蘇(よみがえ)ってきて、来世で再会する楽しさがひしひしと身に迫ってくるのもいいものです。

 老いは決して孤独ではないのです。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2021年4月9日号

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