「出発前には大会ホスト側とWEBミーティングが数回に渡ってありました。主催者側は『絶対に成功させないといけない。だから選手の皆さんもバブルの外には出ないように協力してほしい』と厳しく通達されていました。けれども、空港から主催者側が用意したシャトルバスは行き先を間違えたり、バブルの境界線があいまいだったり、会場内にはマスクをつけずに大声を出している人もいたり……、PCR検査は4日に1回行っていましたが、いざふたを開けてみたら感染対策が徹底されていないと感じました」。
「自分の身は自分で守る」。そう強く感じた西堀・溝江組は、練習とトレーニング以外は自分たちの部屋から出ないように過ごした。通常、遠征した際は、コンディション調整に有力な情報を日本チームや顔見知りのチームから仕入れることが日常茶飯事だった。しかし、今回に限っては外の状況や他選手の動向はまったくわからなかった。
「バブルの境界線は目に見える線が引いてあるわけではありません。なので、気を付けないと間違って外に出てしまう可能性もあるし、出ようと思えば、出ることができたと思います。そして規律を破ったからといって罰則や罰金があるというわけでもありませんでした」(溝江)
これまで経験したことがない未知の世界。身も心も疲弊する中で調整を進めてきた西堀・溝江組だったが、初戦となった予選1回戦。スイスと対戦し21-11、21-16と敗退した。西堀はコロナ禍において初めて経験した試合環境が、少なからず自分たちのパフォーマンスに影響を及ぼしたと考えている。
「普段と違う状況で初めての経験。勝つには、改めて心も体もしっかり準備しないといい状況では戦えないと感じました。一番の反省はカタールに行くという決断が遅すぎました。行っても行かなくてもリスクが見え隠れして、試合に出るという判断がつかないまま練習していました」
溝江も、新型コロナという『見えない敵』と今後戦っていく上での課題をこう述べる。
「練習の時間も通常より短いし、以前みたいに自由に砂の上でトレーニングすることもできない。今回コーチも帯同していなかったので、いろいろな面でコンディショニングや気持ちの作り方が難しいと再確認しました。今後はスタッフの帯同も必要ですし、現地に入るタイミングを考えていくことも大切になってくると思います」