俳優、演出家、脚本家として活躍する河原雅彦氏が“妄想遊び”の楽しみ方を伝授する。
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読者のみなさんにはないだろうか? 世知辛い毎日を送る中で、時たまどうしようもなくボーッと考えてしまう、ホント無意味でどうでもいい“自分的お決まりの妄想”が。
〈これからの人生、3種類の料理だけしか食べられないとしたら?〉
こんなことをふと考え続けて、かれこれ30年は経つ。ちなみに3種類になると、これはとてつもなく苦渋な決断なわけで、当然と言っていいほどそのチョイスに迷いが生じる。
そんな時は思わず5種類にハードルを下げかねない軟弱な自分と出会うのだが、「妄想だからこそ節度は大事!」と悩める心を毅然と律し、再び3種類に立ち返るという、そんなスゲーどうでもいい葛藤すら、30年繰り返される自分的お決まり思考だったりする。
で、ここからが本題。なにせそればっかり食べて生きなければならないのだ。よっぽど好きなものを選びたいところだが、たとえ好きな料理でも胃にもたれるモノは控えた方がいいだとか、栄養のバランスも考慮した方がいいだとか、とはいえ、サラダとかフルーツの盛り合わせ的なモノに当確ランプをともしてもいいものだろうか……などなど、グルグルグルグル考えて、結局、「たとえ痛風にかかろうが断固として好きなモノを食べて生きよう」という、アホみたくシンプルな選考基準に行き着く。
さて、問題は最後のもう一品。これはもう、その時の気分によって決める、いわゆる“遊びを余している”状態なのだが、いくら遊びとはいえ、ナシゴレンやピロシキまでいくと、さすがにどうかと思うので、ここ最近は焼き鳥に落ち着きがち。以前はしゃぶしゃぶを選んでいたのに、寄る年波のせいだろうか? 5年後とか、養命酒とか言ってそうでなんだか怖いよ。あ、あれ、飲み物か。
さあ、みなさん、どうだろう。こんなどうでもいい内容を延々書き散らかして大変恐縮だが、みなさんも暇な時やってみるといいよ、3種類系の妄想遊び。食べ物に限らず、〈今後の人生、3人の女性しか抱けないとすれば?〉とか、試しにちょっと考えてみただけでワクワクしないスか?
けど、まあ、選んだとしても相手の女性も年を取るからなぁ。『今後の人生』を『向こう3年』あたりにあっさり置き換えかねないよなぁ。いやいや、妄想だからこそ節度が大事!
ここはぐっと己を律し、壇蜜(今、超好き!)、キョンキョン(昔っからずっと好き!)芦田愛菜(向こう15年は大丈夫そうという不埒な保険的意味合い!)で今日のところは手を打っておこうか。
こうして結局自分が妄想を始めてしまうこの不毛なループから、お願いですから誰か救って下さい、100円あげるから。今回ばかりはさすがに腹の底から思いますよ。読者の皆々様、お読み頂き、心よりありがとうございました!
※週刊朝日 2013年5月31日号