五輪会場となる東京アクアティクスセンターで4月3~10日に開かれた、代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権で、代表の顔ぶれが固まった。連載「金メダルへのコーチング」拡大版は、平井伯昌・日本代表ヘッドコーチの発言で構成します。
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白血病の治療から競技に復帰した池江璃花子が4日、女子100メートルバタフライ決勝でメドレーリレーの派遣標準記録を突破して優勝。五輪代表に内定した。
「(前日の)準決勝では最後の2かきくらい腕が上がらなくなっていた。決勝ではどう泳ぐか見ていたのですが、最後はかかないで伸びてタッチして、うまく合わせていた。勝つかもしれないとは思っていたけれど、疲労もある中、このタイムまでいくとは考えられなかった。もともと力を出し切る能力や高い集中力を持っていましたが、それが変わっていないのは驚きです。チームに彼女が入ってくれるのはみんなが勇気づけられるところもあるし、戦力としても頼もしい」
5日、指導する青木玲緒樹(れおな)が女子100メートル平泳ぎで2位に入り初の五輪代表に内定。萩野公介も男子200メートル自由形で3位に入り800メートルリレーの代表に内定した。
「女子の平泳ぎは渡部香生子(かなこ)選手と青木の二人が派遣標準記録を突破できた。東京スイミングセンターのときから指導してきた青木は、12歳で米国の高地合宿に連れていって、北島康介選手、中村礼子選手、寺川綾選手らと一緒にやってきて、いつかはオリンピックと考えてきた。両コウスケ(北島、萩野)の金メダルのレースよりも緊張しました」
「(リオ五輪男子400メートル個人メドレー金メダルの)萩野は、リオの後、モチベーションがなくなったこともあって、コーチとしてどこまで我慢できるか、ということが課されていると思いながら指導してきました。メダルの色とかそういうことではなくて、3回目の五輪に行けること、チャレンジしていくこと自体に価値がある、と話してきました。内定をいただいたことを素直によろこんでいた。私も一緒に戦っている気持ちでやってきたので、うれしいです」