本書の中に登場する「考えてほしい」という言葉。それは登場する高校球児たちに早見さんが要求し続けたことでもある。野球エリートである彼らは大人の期待に応えるような発言をしがちだということを、自らも強豪校の球児だった早見さんは身に沁みて分かっている。だからこそ自ら考えることを要求したのだ。

 にもかかわらず、彼らに向けたその言葉は私たち大人にも鋭いナイフのように突き刺さる。

「高校球児を上から目線でかわいそうだって思ったすべての大人たちに読んでほしいと思っています。かわいそうだって決めつけるだけで思考停止に陥っている大人たちは、苦しみ、悩みながら乗り越えてきた高校生たちに10年後20年後に食いつぶされると思っているから」

 考えて、考えて、考えて……。だからこそ早見さんはこう思う。

「目指せなかった先輩のためとか、あまりにもメディアも含めた社会全体が“二年ぶりの甲子園”ということを今年出場する子たちに背負わせすぎています。そんなこと関係ないと思うんです。彼らにとって人生で一度、あっても二度しかない大事な舞台。それを誰かのためにやらせるなんて傲慢です。甲子園は選手たちが憧れてやまない貴重な場所。何も背負わずに大好きな野球をやってほしいと願っています」

(編集部・三島恵美子)

AERA 2021年4月19日号

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