しかし感染の環境は刻々と変わる。西欧へのフライトを目にしながら悩んでいるうちに、日本は再び感染者が増え、今年に入り、2回目の緊急時代宣言に。西欧各国は日本人の入国禁止に舵を切った。
しかしアジアの状況が変わる。感染症危険情報が見直され、台湾、タイ、中国などがレベル2に引きさげられた。タイはビザとは違うCEO(入国許可証)を発行するようになった。PCR検査や保険、現地での2週間の隔離。これを受け入れれば渡航許可が出る。タイは感染リスクが低く、帰国後の隔離でウイルスをもち込む可能性も低くなる。
タイには仕事が多く残っていた。それも手伝い、タイに行くことを決めた。手続きは煩雑だったが、なんとかCEOを取得。成田空港に向かった。
空港は無人都市のようだった。免税店はもちろん、ほとんどの店がシャッターを降ろしている。開いているコンビニでなんとか水を買うことはできたが。
選んだのはZIPAIRというLCCだった。日本航空の子会社だ。大型機を使っていたが、この日の乗客は4人だけだった。
これがコロナ禍の旅ということだろうか。(続く)
■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など