それが誤解だと気づいたのは6年前、「滝沢歌舞伎」の公演で訪れたシンガポールでのことだった。軽いケガをして現地の医師の診察を受けた。英語で症状を聞かれたが、「意味がわかる」と思った。しかも、受験で学んだ英単語を頭の中から引っ張り出して症状を説明すると、医師はすんなり理解してくれた。

「ケガの不安もあったので、医師と英語で意思疎通できたことが本当にうれしかった。英語の勉強をしてよかったな、伝わるっていいなぁって思いました」

 だからこそ、大学院を修了して少し時間の余裕ができたとき、「英語を学び直そう」と思えたのだ。今度は受験のためではなく、自分のために。

「海外旅行のとき、自分でチケットを取ったり、レストランやカフェで注文したり、そういうことが自然にできるようになりたいんです」

 一番行きたい国は?と聞くと、「世界遺産を巡る旅をしたい」と目を輝かせる。

「英語圏ならニューヨーク。ブロードウェーの舞台を理解できるくらいの英語力をつけたいですね。あとは、スペインのバルセロナでガウディのサグラダ・ファミリアを見たい。実はぼく、建築家にあこがれていたこともあったので、そのころから行きたいと思っていました」

 しかし、コロナ禍で海外旅行が難しい時代になってしまった。

「残念です。だからこそ、いまのうちに日本で英語を学んで、準備を整えておこうと思います」

 受験英語を徹底的に学んだ阿部さんにとって、「会話のための英語」は新鮮に感じることも多いという。

「中学時代に習った単語がよく出てくるんですが、使い方のバリエーションがものすごく多いんです。たとえばbookは『本』だけじゃなくて『予約する』でよく使います。あと、haveの登場回数もめちゃくちゃ多くて、『こんな使い方もあるんだ!』って驚かされるんです」

 そんなとき阿部さんは、中学生のときに受けた英検の面接試験を思い出すという。

「面接のとき、“I’d like to”の意味が全然わからなかったんです。“like”って"好き"という意味しか学校で習っていなかったから、中2のぼくは本当に焦りました(笑)」

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入試問題で出合った、英語の座右の銘