17年7月という時期も驚いた。その年の5月、小室さんと眞子さまの婚約内定が報じられ、9月3日には2人並んで記者会見をした。皇室と縁続きになることが公になった時期に、管理組合といえども目立つのはどうだろう。そう思ったのは長く皇室を追いかけてきたからで、「私生活は控えめに」があちらの流儀だろうと理解しているのだ。

 だが、小室さんは理事長になり、今回は自分の正当性を訴える根拠にした。理事長として出席した会議の場でAさんと何度も会った、金銭の返済を断った後だったが、返してくれと言われず、「(眞子さまとのこと)私も応援しています」と言われた──そういう記述だった。

 読み終わり、昭和の「立身出世」を描いた小説を読んだかのように感じた。母1人子1人、肩を寄せ合い、息子は勉学に励む。そんな物語の王道は「東大→大蔵省」なのだが、小室さんは「海の王子」を経て眞子さまへと至る。そう知りながら読むから複雑な気持ちになる。

「立身出世」というより「上昇志向」、いやそれよりも「野望」。それが小室さん母子で、だから理事長を断る選択肢はないのだ、としみじみ思った。

 などと、情緒過多に読み解いた。が、この文書は「金銭トラブルと言われている事柄について誤った情報を訂正していくという判断に至った」から公表した、と小室さんは書いている。

 その点をどう見るか。作家で社会学者の鈴木涼美さんに聞いてみた。「文藝春秋」21年2月号で彼の「金銭トラブル」について、「違う角度から考えれば別のストーリーが見えてくるかもしれない」と語っていた人だ。

「事実はまっすぐな1本の糸ではなく、いろいろな糸が織り込まれてできていると思っています。この文書も彼の信じているストーリーがいろいろ書かれていて、彼なりの事情があったのだろうとは思いました」と鈴木さん。もちろん、元婚約者には元婚約者のストーリーがあって、白黒つけることはできない。それを国民がわいわい議論するのは不毛なことと思う、と。

 文書から「眞子さま好きー」と伝わってくればわかりやすかったが、それは感じられず、プライドの高さやイメージを守りたい思いの強さが膨大な文字量になったと感じたという。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2021年4月26日号より抜粋

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼