ここで受理(accept)となれば掲載決定ですが、有名雑誌の場合は90%近く却下(reject)になります。レビューアーのコメントに対応できれば掲載する論文は条件付き受理(revision)と呼ばれ、研究者に論文の修正を要求することになります。レビューアーは実験の問題点、記載方法、英語の間違いなど幅広い指摘をするため、revisionは追加実験、論文の書き直し、データの再検証など大変な作業になります。有名雑誌になればレビューアーのコメントは厳しいものが多く、対応するのに1年以上かかることがあります。

 なんとかレビューアーのコメントに対応し、論文を再投稿すれば掲載決定……というわけにはいきません。

 ここでもう一度レビューアーの審査が入り、前回のコメントがきちんと反映された論文になっているのか、改変部位に間違いがないか、を確認し、問題がみつかればもう一度revisionとなります。最終的には編集長が「内容に問題なし」と判断してやっと論文は受理されます。

 このように、論文を発表する側の人間にとって投稿から掲載までは長い道のりです。たとえ大発見をしたとしても、それだけは論文掲載のはじめの一歩を踏み出したにすぎず、専門誌に自分の論文が掲載されはじめて世の中で認められた発見となるわけです。

 このため、発見をしてから専門誌に論文が掲載されるまでどうしても時間がかかってしまいます。これを解消するために、査読がない状態で論文を掲載する動きもあります。それがプレプリントと呼ばれるものです。

 プレプリントの論文の利点は、研究者の発見をいち早く世の中に知らせることができることです。コロナ関連の発見では早期に世界中の研究者に情報共有をすることで、パンデミック対策につながります。一方、専門家の査読がないため間違った(もしくは不完全な)情報が混在している可能性があります。プレプリントの論文に関しては内容を吟味できる専門家が読む分にはいいのでしょうが、一般の人が情報収集として読むには危険です。SNSではしばしば一般の人がプレプリントの論文を見つけ、自分なりに解釈した内容を紹介していることがありますが、間違った内容を拡散している可能性があり注意が必要です。

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