ハードなスケジュールや業界的な裏事情も含め、入ったばかりの芸能界を楽しんでいることが伝わってくる。また、家族との仲良しぶりも語っていたし、松任谷由実の「女の子の気持ちをわかってくれるよーな」詞に共感するという憧れも口にしていた。
ちなみに「スタ誕」で歌った3曲も、明るくポップなナンバー。彼女が「全部好き」だと言う百恵の曲にはロック調のツッパリ路線と、ソフトな叙情路線があるが「夢先案内人」は後者に属する。歌いだしが「いつでも夢を」(橋幸夫・吉永小百合)に似たミディアムテンポの人気曲だ。
こうした選曲やユーミンへの憧れからは、明るくポップでおしゃれな音楽への嗜好がうかがえる。とはいえ、洋楽には疎かったようで、インタビュアーが「スローモーション」について、ある洋楽曲と似ていることを指摘すると、
「いい曲なんですね、ソレ。とか自分で言っちゃったりして(笑)」
と、冗談で返していた。
とまあ、16歳の少女らしい飾らない素顔というか、まだまだあどけなく、それでいてスターを目指し頑張ろうという大人びた覚悟も秘めた等身大の彼女自身が、けっこう冗舌に語られていたのである。
ところが、ブレーク後のインタビュー(「ブーム」82年12月号)では、様子が一変。こちらのインタビュアーいわく「ほとんど一問一答」なやりとりに終始している。
「芸能界に入る前と後で何かギャップは感じましたか」という問いには「いいえ別に」。「兄弟とは遊ばないの?」という問いには「皆バラバラに好きなことしてましたから」。そのあげく、インタビュアーの「割とまわりに無関心ですね」というあきらめ気味の投げかけにも「無関心です」とそっけなく答え、インタビューは締めくくられる。
唯一、少女らしい本物の笑顔を見せたのは、インタビュー後のこと。その場にあったテレビでアニメの「魔法使いサリー」が流れたのを見て「サリーちゃんだ!」と声をあげたときだけだったという。