人間とは挫折する生き物。だからこそ、学習を続けるには、こうした生物としての人の特性を認めて、意志や気分に左右されない環境と仕組みを「自分の外」につくることが大切です。
■毎日少しだけ学ぶこと、学習したらすぐ記録を
――英語力向上には、「毎日続けること」が最も効果的といわれます。英語学習を習慣化するコツはありますか?
読書猿さん:まず学習の最小単位をできるだけ小さく設定することです。「今日はまとまった時間が取れなかったから勉強できなかった」という言い訳を先に潰します。どれだけ忙しい人でも、1日1分間を捻出できないことはありません。1分間だけでも取りかかれば、短い時間なので「もっとやりたかった」という気持ちが残ります。念が残ると書いて「残念」といいますが、これが強力なモチベーションの源になる。発見者の名をとって「オヴシアンキーナー効果」と呼ばれます。お金などのリターンがあるより、途中でやめたほうがまた続けたくなる力は強い。途中でやめる方法は、「少しでもやること」なんです。
さらに言えば、死ぬほど忙しかったにもかかわらず、細々とであれ学び続けられたという事実は、自信になります。この自信のカケラを可視化し、積み増ししていく技法が、『独学大全』で紹介している「ラーニングログ」です。「学習したら記録する」というシンプルですが、有効な方法です。一日一日はわずかでも、その蓄積は強力な援軍となる。逆に1分間のスキマ時間を捨ててしまえば、何も残らない。何も学ばず、念もログも残らず、自信は育たず、時間ばかりが空しく過ぎていきます。英語を1分間で学習できるものを用意するなら、人の記憶のサイクルに合わせて出題してくれる単語帳アプリ「Anki」を使うのがベストでしょう。
次に「毎日必ず行う自分の都合で動かせない行動」と学習時間を結びつけること。勤め人なら、通勤中か通勤前に学習時間を設ければ、ほぼ毎日繰り返せます。時間の区切りがつきにくい在宅勤務の方は、あえて毎日繰り返す儀礼的行動を導入するとよいでしょう。同じ時間に同じ椅子に座りコーヒーを飲む、といったことでいいので、できれば厳密に同じことができるように、儀式として作り込むと効果があります。
<プロフィール>
読書猿さん/2008年からブログ「読書猿 Classic: between/beyond readers」を主宰。ギリシア時代の古典から最新の論文まで、先人たちのあらゆる知を「独学者の道具箱」としてまとめ、独自の視点で紹介する『独学大全』(ダイヤモンド社)が、17万部突破。昼間は普通の勤め人として働く傍ら、朝夕の通勤時間と土日に独学に励んでいる。
(構成/曽根牧子)
※「AERA English 2021 Spring & Summer」より
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