高校の教科書は、知りたいことというより、「知っておくべき基礎知識」が書かれています。情報もアップデートされるため、新しい知見までコンパクトにまとまっています。基礎知識にあたるものを英語で読めるかどうかは、「英語で新しい情報を得ることができるか」の試金石にもなります。例えばニュースに出てきた国の歴史を、索引で引いて英語で読んでみるといいでしょう。英語力と教養とが一度に身につきます。
英文学の大家である行方昭夫東京大名誉教授の『解釈につよくなるための英文50』(岩波ジュニア新書)は、解説が生徒との対話になっていてやさしげですが、レベルが高く、やりきれば効果絶大です。行方さんは『東大名誉教授と名作・モームの「赤毛」を読む 英文精読術』などのシリーズが人気ですが、先にこちらを薦めます。載っている英文は大学受験で使われるような名文で、「英語を読むってここまでやるのか」ということがわかり、普段出合う英文で、理解できないものはなくなるでしょう。本気で英語をやりたい人が、出合うべき書物です。
■最良の英語学習法は「復文」「音読」「動機付け」
――結果を出したい読者に向けて、効果の高い英語学習法を教えてください
読書猿さん:『解釈につよくなるための英文50』の序文では、筆者の行方さんが、ドイツ語学者・関口存男の『Die Arbeit(労働について)』でドイツ語に開眼した、と告白しています。この「語学の天才」とうたわれた関口さんが実践されていたのが、「復文」という学習法です。
「復文」とは、「英文を和訳し、和訳からもとの英文を復元する。完全にできるまで何度もやる」というもので、地味ですが、すぐに効果を実感できます。間違えた箇所が文法なのか、単語なのか、結果に浮かび上がるので、何百回と英単語を唱えるより、1回復文をやるほうが効きます。語学学習は、最初は言語の違いをどれだけ意識化できるかなので。
次には「音読」があげられます。ポイントは、完全に理解した文を音読すること。「完全に理解」というのは、(1)読んで分かる。単語・文法ともに理解できないところがないことに加えて、文章の内容についても不明なところがない。このためには先に復文をしておくといいと思います。次に(2)音声で聞いても、同様に理解できる。(1)と(2)が済んでから、(3)テキストを見て音読します。できれば録音して、聞き返し、おかしなところがないか確認します。なめらかに音読できるようになったら、最後に(4)テキストを見ずに暗唱音読を繰り返し行います。