宮坂教授は現在、ワクチンを「打つ」と決めている。昨年11月時点では、ワクチンの安全性に関するデータが不十分だとして「当面打たない」と考えていたが、現在は「打つリスクより、打たないリスクのほうがはるかに大きいと判断している」と話す。その判断基準の一つとなったのが、アメリカ疾病対策センター(CDC)が今年1月に発表した、ワクチンによる副反応の頻度を解析した報告だ。これによれば、痛みや腫れ、全身倦怠感などの副反応はやや頻度が高いが、重篤な副反応の頻度は100万回に1~10回未満だ。

「これは飛行機に乗って死亡事故に遭遇する確率と同じ程度で、他のワクチンとも変わらない数字です」(宮坂教授)

 アナフィラキシーを起こす頻度も、食べ物(小麦粉、卵、牛乳など)や抗生物質によって起こす場合よりも「はるかに低い」(同)と指摘する。

 さらに自然感染によってできる抗体は質や量に個人差がかなりあり、免疫が弱い人は再感染する例が見られるのに対し、ワクチン接種で得られる抗体は個々の免疫機能にかかわらず、ほぼ一様に強い免疫ができるという。

「自然感染の免疫がどれぐらい続くのかはまだ定かではありませんが、ワクチン接種では今、最長で8カ月間、免疫が続いている例があります。私はワクチン接種によっておそらく1年ぐらいは免疫が続きそうだと見ています」(同)

 重症化リスク、死亡リスクが高い高齢者が自然感染によって免疫を獲得することは大きなリスクでもある。一般的に免疫機能が低い高齢者でも、ワクチンを打つことで十分に強い免疫ができることも報告されている。

 とはいえ、「ゼロリスクではない」と言われると、打つしかないと思っていてもモヤモヤした気持ちは晴れない。現在、ワクチンの主な副反応として挙げられているのは、頭痛、関節や筋肉の痛み、注射した部分の痛み、疲労、寒気、発熱など。まれに見られる重大な副反応として、ショックやアナフィラキシーが報告されている。「打つのが怖い」という気持ちを、声に出して言いづらい空気があることも事実だ。

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