そのくらい日本の女性の置かれている状況はひどいと私が思っているという話でもあるけれど、実はそのくらい日本の生理用品事情はひどいという現実もある。女性自身も、生理の血は汚い、腟の中に手を入れるなんて怖い、という意識をもっている人は少なくない。そのことを、私は20年以上生理用品を売るなかでさんざん突きつけられてきた。

 例えば。日本の生理用品は国際的にも際立って規制が厳しい。例えばタンポンはこの国は長年医療機器のクラスIIと認定されていた。これは注射針とかカテーテルとかと同じ基準だった。2009年に国際的な基準にあわせてクラスI(メスとかピンセット、歯医者さんで使う技工用品など)と同じレベルのものになったけれど、2009年までタンポンは注射針レベルで人体への影響を考慮されていたのだ。

 また日本では、使い捨てナプキンは「医薬部外品」である。人体への作用の程度から医療機器や薬ではないけれど、化粧品でもないものを日本では医薬部外品という。たとえば口臭ケアのための液体とか、育毛剤とかだ。で、使い捨てナプキンについて「育毛剤」レベルで厳しい基準を定めている国は私が知る限り、他に韓国くらいしかない。かなり珍しい状況だ。

 さらに驚くべきことなのだが、今、自民党の「フェムテック振興議員連盟」(フェムテック議連)というところが、最先端の生理用品とされる吸水パンツ(ナプキン数枚分を吸水できるパンツ)を、医薬部外品にしようという動きがあるようだ。世界広しといえども、布パンツを育毛剤レベルで規制する国は日本だけだ。
 
 少し前のことだが、厚生労働省関係の人に「吸水パンツを医薬部外品にするのはおかしい。そもそも使い捨てナプキンが医薬部外品なのもおかしいと思う」と話す機会があったが、その人がかなりの剣幕でこう返してきた。「おかしくないです。血ですよ? 危険ですよ? 死者が出ることもあるんですよ?」。そのときはその剣幕に押されてしまったが、心のなかでバッカみたい! と大笑いした後、なんだか泣きたくなった。

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ちょっと待ってよ、お役人さん