組織にこれだけの不満を抱いていれば、おのずと「退団」が選択肢に入るはずだ。しかし団員たちの多くが、「退団は難しい」とこぼした。

「辞めたいと切り出しても、『最低でも班長まで務めあげて、代わりの人間を勧誘すること』を求められます。若手同士ではよく、『県外に引っ越すしかないよな』という話をします。村八分覚悟でばっくれることも考えましたが、家族ぐるみでつながりがあるので、それもできずにいます」(20代男性)

 20代の若き団員は取材の最後、消防団を統括する消防庁に伝えたいこととして、こう切実な思いを吐露した。

「(地元の消防団は)内から変わるような組織ではありません。上から変えていかないと変わらないと思います。本気で組織を存続させたいのであれば、まずは団員の負担軽減を第一に考えてほしい。無駄な行事を無くして、実際の火災現場で役立つ技能を、無理のない範囲で習得できるような体制を作ってほしいです」

 団員不足が慢性的な問題となっている消防団。若手を確保するには、強制的な囲い込みではなく、組織の変革が必要なのではないか。健全に活動に励まれる団もある一方、令和においても「理不尽な古い慣習」を持つ団が残ったままでは、前途有為な新人の加入はますます遠ざかってしまう。
(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)