「疾患を管理するために、患者さんに身長、体重を始め、血圧、脈拍数など、さまざまなデータを入力してもらうことで、患者さんの日常の健康状態を医師が知ることができるようになります」
診察時は患者は調子がよくなっていると話したとしても、実は血圧が上がって悪い方向に進んでいる場合もある。直接会わないオンライン診療だからこそ、「データを活用して身体の変化を見逃すことがないようにしたい」と宮田さんは言う。
オンライン診療への意識の変化について前出の黒木さんはこう話す。
「オンライン診療は、医療機関での入院、外来、訪問に続く第4の診療形態と考えています。米国、欧州などで広がりを見せるオンライン診療が日本でなかなか普及してこなかったのは、保険診療上での抑制と日本で新しい技術が導入されにくい土壌などがあると思います。まだ課題はありますが、コロナ禍で感染リスクの少ない診療として知られるようになったので、平常時にも普及することを心から願っています」
パソコンやスマートフォンの扱いが不慣れな高齢者にはオンライン診療はハードルが高い。黒木さんは「急な体調の変化や緊急の処置や検査が必要なケースなど、オンライン診療には向いていない疾患もある」と言う。
厚労省の担当者は「適切なオンライン診療の普及を目指して検討を続けている」と話す。医師の責任、医療の質の確認、患者の安全確保、情報提供の徹底などが、今後に向けた課題だという。
筆者は初のオンライン診療を受けた1週間後、2回目を仕事の空き時間にオフィスで受けた。
「今日は会社ですね。時間の無駄がなくていいですよね」
スマートフォンの画面越しに内山院長がそう話して、診察が始まった。もうオンライン診療がない生活は考えられない。(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2021年5月7-14日合併号