人々の命と暮らしを守るために東京五輪の開催中止を求めます――こう呼びかけたオンライン上の署名活動が、開始わずか3日で24万筆を超えた。緊急事態宣言の延長で今月17日に予定されていた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の来日が絶望的になるなど、五輪を巡る状況は日に日に厳しくなっている。署名の発起人で都知事選にも出馬した元日弁連会長の宇都宮健児氏(74)が、AERA dot.の取材に応じた。
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これほど反響が大きいことに私自身、驚いています。オンラインの署名サイト「Change.org」で5月5日正午に開始しましたが、6日正午には5万6312筆に。7日13時23分に20万筆を突破し、加速度的に署名は増えています。
高齢の方が署名を希望しており「紙ではやっていないのか」という問い合わせの電話がひっきりなしにかかってきます。医療従事者の方からは、「医療現場は大変疲弊しきっている。自分たちがあげられない声をあげてくれたことに感謝している」という電話もありました。
日本国内だけでなく、アメリカや韓国、シンガポールの放送局から取材があり、海外メディアも関心を持ってくれているようです。
米ワシントン・ポスト(電子版)が5日のコラムで、トーマス・バッハ会長を「ぼったくり男爵」と表現したように、おそらく、一番オリンピックをやりたがっているのはIOCだと思います。開催しなければ、IOCの重要な収入源である放映権料とスポンサー料が入ってきませんから。
世界のメディアは日本以上に厳しい言い方をしているところが多いでしょう。日本でも一部の著名人が聖火ランナーを辞退していますが、真正面から東京五輪開催中止の議論が湧きあがってきません。一方、再延期と中止を求める声があわせて7割という世論調査の結果があります。今回の署名は、こうした世論を可視化する運動になっていると思います。
丸川珠代五輪相は6日の会見で、IOCが米ファイザー社が出場する選手団全員にワクチンを無償提供すると発表したことを歓迎しました。しかし、ワクチンがまだ国民に行き渡っていないなかで、納得を得られるかという国民感情を考慮するべきだったと思います。まずは医療スタッフが接種することになっていますが、日本の医療スタッフでもまだ接種していない人がいる状況で、選手だけというのもいかがなものか。東京五輪開催ありきで考えているせいで、新型コロナ対策に歪みが生じています。