このところの世界中の混乱は、まるで天照大神が天岩戸に隠れ世の中が真っ暗になってしまった時に魑魅魍魎が蠢いていた世界のように感じる。誰もかれもが他人を批判し、明るい話題を口にしない世の中は、“妖”にとってさぞや自由気ままに動きやすいことだろう。あの時は、困った神々が天の安河の川原に集まり、対策を話し合った。そして、八百万の神々が協力して明るい世界を取り戻す智慧を出し合ったのである。
●お祭りを復活させる理由づけができるのか
岩戸隠れの伝説は、日本だけでなく特にアジア地域に似たような神話が残っているらしい。日本にはこの岩戸隠れの主要な登場人物(神々)に対するお祭りが、毎年行われている。残念ながらほとんどが2年続けて中止に追い込まれていて、そしてこの先、何年中止になるのかもわからないのだ。何しろ中止とした根拠となるデータなどどこにもないのだから、復活させる理由づけができない。絶望的でさえある。アマテラスが洞窟から出てくるという、分かりやすい話(ただしかなりトリッキーな技を使ってではあるが)がむしろ羨ましい。
●岩戸がご神体として存在
少しだけアマテラスが岩戸を空けた瞬間、こじ開けた神さまはアメノタヂカラオという。そして開けた岩戸を投げ飛ばし落ちたところが、長野県の戸隠とされている(各地にも伝説が残る)。この岩戸にちなんで、アメノタヂカラオを祭神としてお社が建立された。もともと、ここは九頭龍(クズリュウ)大神が地主神として祭られていた場所で、並ぶように天手力雄命を祭り、戸隠神社の中心の社を担っている。
●戸隠神社は5社の総称
このアメノタヂカラオが祭神の奥社と九頭龍社、岩戸からアマテラスを引き出す策を練った神・天八意思兼命(アメノヤゴコロオモイカネノミコト)を祭る中社、岩戸の前で踊りを舞った天鈿女命(アメノウズメノミコト)を祭る火之御子(ひのみこ)社、天八意思兼命の子である天表春命(アメノウワハルノミコト)を祭る宝光(ほうこう)社の5社を合わせて戸隠神社と呼ぶ。