![デーブ・スペクター/米イリノイ州シカゴ出身。米ABCテレビのプロデューサーとして来日。タレント、コメンテーター、放送作家としても活躍[写真:(株)スペクター・コミュニケーションズ提供]](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/840mw/img_8b850fdc8ef5a5260038f6b53b3ec02d97709.jpg)
東京五輪の開催まで約2カ月、世論の「中止論」が高まっている。米英のメディアも、中止を訴える記事が多く掲載されている。テレビプロデューサーのデーブ・スペクターさんは、どう捉えているのか。AERA 2021年5月24日号で語ってもらった。
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東京五輪・パラリンピックの「中止」や「延期」を求める世論は国内で6~8割。海外なら連日、大規模デモが起きてもおかしくない状況です。
なぜこうなったのか。問題は五輪を運営する側にあります。
「東京五輪」はいつのまにか「自民党五輪」に乗っ取られました。大会組織委員会の森喜朗前会長も自民党の元総裁ですが、後任の橋本聖子会長も、五輪担当相の丸川珠代さんも自民党。運営の中枢にいるのは、自民党の顔色をうかがう人ばかりです。だから、大胆な発想で引っ張るリーダーは存在せず、言葉に温かみも感じられない。国民が五輪を冷めた目で見る理由の一つは間違いなくそこにあります。
五輪にトキメキを感じられない中、大会予算はどんどん膨らみました。そこへ新型コロナウイルスが覆う形になりました。
五輪を開催したければ、日本はどの国よりも早くワクチンを取得すべきでした。日本のワクチン接種率は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国の中で最下位。ワクチンの取得が遅れた段階で、日本は五輪を開催する資格を失っています。
開催を1年延期するのであれば、7月から10月に開催時期の変更を求めることもできました。猛暑の期間に開催されるのは、巨額の放映権料を支払っている米NBCの要望を無視できないからだとされていますが、国際オリンピック委員会(IOC)が放映権料を下げてもよいと判断すれば可能でした。要はIOCが収入を減らしたくなかっただけの話。まさに「ぼったくる」ためです。
米英のメディアから、「東京五輪中止」を訴える記事が相次いでいるのは、日本のワクチン接種の遅れが大きいと思います。選手団を送る側としては、日本の現状を見れば当然、ちょっと待った、という気持ちになります。ただ、近年の五輪開催の在り方に否定的な人が増えていることが背景にあるのも押さえておくべきでしょう。スキャンダルまみれのIOCに対する不信感が、東京五輪開催をめぐる議論を機に表面化したとも受け止められます。
じつは私は、五輪をさっさと開催してしまったほうが気分がすっきりする面もある、と考えています。「自民党と利権団体のためにどうぞおやりください。ただ今後、あなたたちとお付き合いを続けるかどうかは分かりませんよ」といった気持ちで開催すればいいんです。大会はたぶん盛り上がりません。それでも、「五輪は過去のこと」として国民のマインドがリセットされる意義はあると思います。
日本では二度と五輪は開催されないでしょう。近い将来、虚飾にまみれた五輪自体なくなる、と私は予想しています。
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年5月24日号
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