
学生時代は大きな問題がなかったのに、大人になって 働きだしてから、発達障害の特性ゆえに困難を抱える──。 自分の得手不得手の偏りを知り、困りごとを改善に導くプログラムがある。AERA 2021年5月24日号から。
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「子どもの頃から友だちが少なくて、団体行動は苦手。クラスの人気者とは対極にいました」
発達障害について記した漫画『なおりはしないが、ましになる』の作者、カレー沢薫さんはそう自身を振り返った。自分の中で思考が進み、時折突飛な発言をして周囲に驚かれることもあったが、学校生活に支障はなく、成績はむしろいいほう。ちょっと人見知りだが、内向的な性格の範疇と思って生きてきた。
一転、「生きづらさ」を意識するようになったのは、会社員として働きだしてからだ。
「仕事をみんなでやるという発想ができなくて、コミュニケーションも苦手。いつの間にか孤立して何かあっても報告できず、一人で抱え込んで限界を迎えて辞める。その繰り返しでした」
同じ状況に何度も追い込まれ、自分の障害を疑ったことがあるが、職場を休んで受診するまでではなかった。だが、会社を退職し、漫画の仕事に絞ってから、違和感が高まった。漫画の仕事がはかどるかと思いきや進まない。散らかった仕事部屋も荒れたままで、ストレスがたまり、「何かがおかしい」と感じた。
■社会に出てから顕在化
そこで漫画の取材も兼ね、東京のメディカルケア虎ノ門を訪れた。カレー沢さんは検査を経て、ASD(自閉症スペクトラム症)とADHD(注意欠陥・多動性障害)を併せ持つ、「グレーゾーン」と診断された。「確定診断には至らない」が、「傾向がある」という意味だ。
カレー沢さんのように、学生時代は特に問題が表面化しなかったのに、社会に出てから発達障害の特性に気づくケースは少なくない。同院の五十嵐良雄医師が話す。
「発達障害は生まれつきの特性で、治るものではありません。学業に影響がなければ見逃されることも多く、社会に出て初めて困りごとや軋轢に直面して特性が顕在化するため、『大人の発達障害』と呼ばれます」
大人の発達障害としては大きく二つが挙げられる。一つはADHDで、多動性は目立たなくなるが、物忘れやケアレスミス、カッとしやすいなどの特徴があるとされる。投薬治療が奏功するケースもある。もう一つのASDは、場の空気や暗黙のルールがわからない、人とのコミュニケーションが不得意、物事にこだわる、感覚過敏などの特性が残るという。
発達障害でうつなどの二次障害を発症しやすいことも国内外の調査でわかっている。
同院は2005年から、うつ病などによる休職者向けのリワークプログラムを行っているが、現在では参加者の約6割近くに発達障害の傾向があるという。