大阪府羽曳野市在住の直木賞作家・黒川博行さんの週刊朝日での連載「出たとこ勝負」は100回の節目を迎えました。今回は「黒川家の動物たち」をテーマに、日本画家・雅子さんとの夫婦対談をお届けします。
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──黒川家の動物といえば、やはりオカメインコのマキ。連載に一番多く登場している動物です。
▼黒川博行(以下▼) 一日中ずっと一緒ですから。とにかくそばを離れませんね。懐き度が相当強いというか。でも、犬や猫のように、こっちの機嫌をとるようなことは絶対しません。ただ好きなように遊んでいる。
▽黒川雅子(以下▽) 指をかんだり、悪いこといっぱいします(笑)。
▼待つ、というのは犬や猫と一緒ですね。外出して家に帰ってくると、ものすごくよろこびます。
──最初に鳥を飼ったきっかけは?
▼30代の高校教員のころ、生徒が「うちで生まれたから、先生あげるわ」言うて、セキセイインコのヒナを持ってきたんですよ。マキは、その子の名前からつけました。今のマキは4代目です。
──直木賞受賞作『破門』にも出てきます。
▼マキはよくしゃべるし、歌うので、場面転換で登場させて読者に休憩してもらおうかな、と。主人公の独白をインコに聞かせる、という効果もありました。登場させてよかったな、と思います。
──エッセーの毎回のテーマは、どのように決めていますか?
▼そのときどきで自分がおもしろいと思ったことですね。大阪人ですから自虐ネタが多い(笑)。朝日新聞朝刊の4コマ漫画、いしいひさいちさんの「ののちゃん」を目指しているんですよ。
▽大好きやもんね。おもしろかったとか、オチが深くてよくわからへんとか、二人でよく話をします。
▼いしいひさいちはたいしたもんです。よくぞ1年365日、家族とその周辺の小さい世界だけでネタをとってますよね。世間であったニュースはほとんど出てきません。
▽そやね。
▼四コマ漫画とかエッセーというのは身辺雑記やから、その意味で「ののちゃん」と同じような考え方でやってます。世間に対して物申すということはしたくない。物申したいことはいっぱいあるけど、それをするとなんかえらそうになりますからね。物書きやから人よりえらいということはまったくないんで。