内村光良は人を肩書で判断せず、すべての人に“平等”に接するという。理想の上司ランキング、男性部門で5年連続第1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)は11日の発売前に重版が決まるなど、注目を集めている。関係者への取材をもとに同著をまとめた、博報堂ケトルのクリエイティブディレクター・畑中翔太がリーダー内村を分析する。
第4回目のテーマは「肩書に差をつけない」。
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内村はたとえ相手が出演者であろうが、プロデューサーであろうが、照明のスタッフだ ろうが、衣装の助手だろうが、それぞれの存在にまったくと言っていいほど「差」をつけない。つけない、というより内村の中にそこに「差」が存在しない。
「内村さんは、とにかく全てにおいて平等なんです。たとえばスタッフの助手の子と、プロデューサーの私の間に、全く差をつけない。そういう接し方をする方です」
これは内村が監督した映画『ボクたちの交換日記』でチーフプロデューサーを務めた関西テレビ・重松圭一氏の言葉だ。長時間にわたる映画撮影の場合、連日連夜、現場で忙しく働くスタッフと違い、プロデューサーは時折、顔を出す存在だ。だからこそ来訪した際には気を遣い、意図的に会話の回数を増やす監督や出演者は少なくないのだという。
想像してみてほしい。もしあなたが映画スタッフの一員で、出演者や監督に対して「この人は相手によって態度を変える人だ」と感じたなら、それが業界の常と理解していても決して気持ちがいいものではないだろう。
一方、内村はそういった態度を一切取らず、プロデューサー、ベテランスタッフ、新人スタッフ、誰に対してもまったく同じ態度で、普通に会話をするという。
「現場の若い人たちは、内村さんのこのフラットな接し方にまず驚きます。そういう人となりがいつの間にか、“内村さんの思いに応えたい”という現場のモチベーションにつながっていると思います」(前出・重松氏)
翻って、これを一般社会に置き換えて考えてみよう。私たち社会人という生き物は、どうしても「肩書」に差をつけてしまう。相手先のクライアントであれば、決定権者である“キーマン”をより懇意にするし、撮影現場であれば、総指揮である“監督”の言葉に最も耳を傾ける。アルバイトであっても、新人のアルバイトよりも長年勤めている “ベテラン”の意見をより大事にしてしまうだろう。