いきなり東京から地方移住は、ハードルが高い。それならば、東京近郊へのプチ移住を検討してみてはいかがだろう。AERA 2021年5月31日号は、子育て世代、高い文化水準を求める人に最適な街を紹介する。
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子育てをきっかけに新居を考えるなら、首都圏だと千葉県流山市が外せない。
もともと、高度成長期に団塊の世代が移り住んできた街だった。高齢化が進んできたため、今度は「母になるなら、流山市。」を合言葉に、若い世代の子育て支援に力を注いできた。
市内の指定保育園に子どもを送迎する駅前送迎保育ステーションを設置。保育園の耐震工事やエアコンの導入、児童手当や医療費支援も充実させてきた。市民の定住志向率は80%に達し、流山市を名指しで移住してくる人も増えているといわれる。
17年の流山市の合計特殊出生率は1.62。県平均の1.34、全国平均の1.43を大きく上回っている。市の合言葉は、決して大げさではない。
最近では「都心から一番近い森のまち」もキャッチフレーズにしている。つくばエクスプレスを利用すれば、秋葉原駅から南流山駅、流山セントラルパーク駅、流山おおたかの森駅までいずれも20分台で到着する。流山セントラルパークにはうっそうとした森に囲まれた総合運動公園があり、流山おおたかの森にはオオタカが生息する市野谷の森がある。また、市のいたるところに緑地が残っている。
■「とかいなか」を満喫
特に流山おおたかの森の駅周辺は大規模マンションの開発が進む。駅から少し離れれば建売住宅も多く、選択肢も豊富だ。
首都圏近郊で高い文化水準を求めるなら、茨城県つくば市だ。
早くから研究学園都市として大学や国、企業の研究機関が集積している。人口24万人を超す中都市だが、市域は約284平方キロメートルに及ぶため、人口密度は決して高くない。
つくばエクスプレスで秋葉原まで最短45分のつくば駅の周辺には大規模商業施設が並び、利便性も高い。その半面、駅前を離れれば豊かな自然が広がっている。まさに「とかいなか」の典型といっていいだろう。
つくば駅の手前には、研究学園駅、万博記念公園駅、みどりの駅があり、マンションや建売住宅も多い。都心に比べて格段に安いのはもちろん、つくば駅に比べても安いのが魅力。加えて、地元の人によると、
「大学や研究所の教授・准教授クラス、民間企業の主任クラスの研究員など、所得水準が高く、民度の高い人たちが多く、安心して住めるまちが多い」
という声が少なくない。
緊急事態宣言が終わったら、気になる街に出かけてみては。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
※AERA 2021年5月31日号より抜粋