ベテランの添乗員の一人は「取材は受けないように上から言われている」と話しながらも、政府のこの計画は普段から不特定多数の高齢者に接している立場からすると、「駅改札から約10分」という案内ひとつとっても配慮が足りないと語った。
「65歳以上の高齢者として想定されているのが、普段からITを使いこなしている、または家族が近くにいて予約を代行してくれる、そして健康で何も不自由のない健常なお年寄りなんです。けれども、社会はもっと複雑です。病気を患っている人、視力や体力に自信がない人。杖を使っていたり、車椅子に乗っていたりする人など、様々です。それを一緒くたにしてできると思っても不可能です」
とした上でこう続ける。
「民間に何の説明もなく『丸投げ』されるのは困りますが、官民連携はいいことだと思います。私たちも仕事がなくて困っていますので大変ありがたい。それに誰かの役に立つということは、お金とはまた別のやり甲斐がありますから」
無論、こうした委託費用の金額、その健全な使われ方の検証は必要だ。しかし、例えば災害時の自衛隊とボランティアの官民連携などは、東日本大震災をきっかけに各地で始まっている。
(編集部・中原一歩、福井しほ)
※AERA 2021年6月7日号より抜粋