一方で、こんな声もあった。
「時間は聞かれませんでした」
午後1時半の枠を予約していたという江東区の男性(68)はそう振り返る。受け付けで接種券番号の確認はあったが、時間帯を指摘されることは一度もなかったという。
このワクチン接種のための予約サイトをめぐっては、接種が始まる前からシステムの不備が露呈した。26日には通信障害が発生。予約そのものができなくなったと同時に、会場にやってきた予約者の特定ができなかったことで受け付けには長い行列ができた。システムはおよそ1時間半で復旧した。
■複雑な会場アクセス
全国から動員された自衛隊関係者は、東京・大阪の2会場で280人。医師・看護師資格を持つ「医官」80人、「看護官」200人と発表されている。それ以上に目立ったのは、会場の受け付けや誘導、接種記録の管理に奔走する大手旅行会社から派遣された添乗員だった。防衛省は東京と大阪の会場運営をそれぞれ「日本旅行」(委託費用・約19億4900万円)と「東武トップツアーズ」(委託費用・約9億6700万円)に委託した。運営は民間に「丸投げ」した格好となったが、この決断は結果的に奏功したようだ。
東京の場合、接種会場がある大手町は決して交通の便は悪くないが、構内の改札口から会場までのアクセスは複雑だ。改札と地上出口の間には地下通路が迷路のように走っている。最寄り駅は地下鉄三田線大手町だが、最寄りの出口である「C2b」を探すのは一苦労だ。都交通局の案内には「大手町改札からC2b出口まで徒歩10分」とあるが、土地勘のない高齢者にはハードルが高い。それに会場のそもそもの名称である「大手町合同庁舎3号館」が一般には知られていないので目印にならない。なかには地下鉄の駅から会場まで30分近くかかったという高齢者もいた。
■腰の低い添乗員たち
そんな中、会場周辺には日本旅行から派遣された添乗員たちが、それぞれの改札口近くに名札をつけて待機。接種券を握りしめて迷っている高齢者を見つけると、率先して声をかけ、話をする場合はひざをついて同じ目線で会話をする。