なぜ東京・大手町なのかと首をかしげる人が少なくない。感染を減らすために人流を減らすという当初の目標とも整合性がとれない(撮影/写真部・松永卓也)
なぜ東京・大手町なのかと首をかしげる人が少なくない。感染を減らすために人流を減らすという当初の目標とも整合性がとれない(撮影/写真部・松永卓也)
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ワクチン接種を受ける両親のために上京した人もいた。障害がある人や介護を必要とする単身高齢者への接種の方法は決まっていない(撮影/写真部・松永卓也)
ワクチン接種を受ける両親のために上京した人もいた。障害がある人や介護を必要とする単身高齢者への接種の方法は決まっていない(撮影/写真部・松永卓也)

 東京と大阪で始まったワクチン大規模接種。その実態とはいかなるものか。AERA 2021年6月7日号から。

【写真】ワクチン接種会場へ向かう人々

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「とにかく100万人という数字をぶち上げるのが重要だ。政府が先頭に立ってワクチン接種を推進しているという姿勢を、国民の目に焼き付ける。菅政権の命運をかけた目玉政策です」

 東京・大阪の2会場で始まった新型コロナウイルスの大規模接種について、ある政府関係者はこう話す。最初の1週間の対象は65歳以上の東京23区と大阪市の住民で、2週目からは都内全域と大阪府内全域に拡大される。この「自衛隊による100万人大規模接種」は、コロナ対策全般で政府の思い通りにならない地方自治体や厚生労働省、日本医師会に対する強烈ないら立ちでもあった。

 実際、新型コロナ対応の法的根拠となる「コロナ特措法」は法律の立て付け上、各都道府県の知事に権限が集中している。政府は「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」などは発令できても、飲食店などへの時短要請や協力金の支給、そしてワクチン接種は地方自治体頼みだ。別の政府関係者はこうも漏らす。

「菅義偉首相の頭の中には三つの数字しかありません。『新型コロナの新規陽性者数』『国内ワクチンの接種人数』、そして『内閣支持率』です。ただ、政府がどれだけ旗を振っても、都道府県の動きが遅いことに首相は頭を抱えています。得意の人事も通用しませんから。とくに一部のメディアが先週発表した、7月に都議選を控える東京都で支持率16%という数字は、官邸に衝撃が走りました」

■時間帯の指摘はなし

 こうした状況の中、菅首相が頼ったのが自衛隊だった。

 初日の24日、東京・大手町の会場には30人ほどが並んで開場を待っていた。接種開始は午前8時。午前6時15分から並んだという品川区の男性(65)はこう語った。

「8時の枠で予約しましたが、混雑する前にと早めに来ました」

 接種の注意点として「予約時刻に遅れた場合、当日の確実な接種は実施しかねる」との記載があるため、時間に余裕を持って訪れる人が目立った。

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