少なくとも1回の新型コロナウイルスワクチンを接種した人が5月30日時点で50.15%となったアメリカでは、予防接種が完了(ファイザーやモデルナワクチンなど2回接種するワクチンの2回目の接種から2週間後、またはJohnson & Johnson の Janssen ワクチンなど単回投与ワクチンの接種から 2 週間後)した人は、パンデミック前に行っていた活動を再開できるようになりました。必要とされている場合を除いて、マスクの着用や他の人と距離をとる必要がなくなっています。

 少なくとも1回の新型コロナウイルスワクチンを接種した人が5月30日時点で57.83%となったイギリスでは条件付きで海外旅行の再開を認めることが発表され、38.33%となったイタリアでも、ワクチンの接種証明書や陰性証明書の提示を条件に、今年の夏に外国人観光客の受け入れを再開する方針であることが発表されています。5月29日時点で37.5%の人が少なくとも1回の新型コロナウイルスワクチンを接種したフランスでも、6月9日から、ワクチン接種や免疫を証明するなどの条件付きで外国人観光客の受け入れると言います。

 これはワクチン接種のインセンティブ(=やる気を起こさせる動機づけ)をつけるという意味もあります。ワクチンを打ったら何かが緩和されるということを明確にして、さらにワクチン接種を促進しようとしているのです。アメリカは、ワクチン接種を徹底して促進しようとしています。

 一方の日本はというと、少なくとも1回の新型コロナウイルスワクチンを接種した人は5月30日時点で7.21%です。職場での接種や大学生への大学校内への接種も6月中旬に始める方向で調整が始まっているようですが、予定通りに接種が始まるかどうか、自治体に丸投げで接種を進めている現状では甚だ疑問です。

 世界に大幅な遅れをとったこともあり、なんとかして接種を進めようとしている姿勢は見て取れますが、米国のようにワクチンを接種すれば、パンデミック前に行っていた活動を再開できると言った議論は、日本では行われていません。ワクチン接種を終えた人であっても、今まで通り、日本に入国する際は2週間の自主隔離を強いられたままです。ワクチン接種後の規制緩和の議論までは、残念ながら行きついていないようです。

 アメリカや欧米諸国のように、マスクが不要になり、観光客の受け入れが始まり、海外から帰国した際の2週間の自主隔離がなくなる日が日本にやってくる来るのでしょうか。日本が、さらに接種を促進するには、国民目線にあった「インセンティブ」を考える必用がありそうです。もっと世界から学ばねばなりません。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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