※写真はイメージです (GettyImages)
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(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)
(週刊朝日2021年6月11日号より)

 本誌「週刊朝日」でも反響の大きいケアハウス(軽費老人ホーム)特集。これまで、さまざまな声が寄せられてきたが、自宅から離れた地域の入居についての相談も多い。今回は移住先として人気の北海道編を介護福祉士でライターの栗原道子さんがお届けする。

【一覧で見る】年金だけで暮らせる北海道のケアハウスはこちら

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 シニアといっても、まだ体力も気力もある比較的若い世代の中には、北海道で暮らしたいという声が少なくない。

 かつて、私がNPO法人にいたとき、独身の60代女性が相談に見えた。

「定年まで一つの会社で働いて退職したばかりです。小さいけれど中古のマンションも買いました。定年後は北海道で暮らしたいと、それを励みに働いてきたんです」

 北海道の大自然をめぐる旅をしたい、流氷を見たい、ニセコでスキーもしたい、ドラマ「北の国から」の舞台となった富良野の花畑も……と目を輝かせて言った。

 預金はマンション購入ではたいたが、年金のほかに退職金数百万円はあるので北海道めぐりは十分できると言った。

 北海道での住まいはケアハウスを希望。「横浜の自分のマンションは賃貸に出します。家賃はためて介護が必要になったら介護付き有料老人ホームに入ります」。持ち家があっても入居できるのは、ケアハウスの大きな魅力の一つだ。

 女性の下調べは十分。両親はすでに他界している。「兄弟には頼りません。みな家庭があるので当てにされても困るでしょう。私の意思で独身を通してきましたし、自分のことは自分でします」

「ケアハウスに入るのには保証人が要りますが、どうしますか?」と聞くと、北海道での保証人の会もいくつか調べていた。

「ひとり暮らしと集団生活では違う部分もありますから気を付けて」という助言には、「長く組織の中で生きてきましたから、巻き込まない、巻き込まれない生き方は習得しています」と話し、颯爽と旅立っていった。

 女性から時折届くはがきからは、ひとり旅を楽しみ、趣味の会で友人もできて幸せに暮らしている様子がうかがえる。帰る家(ケアハウス)があって、お帰りなさいと言ってもらえるのはうれしいとの便りもあった。

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