「元々、毛深いこともあって、以前は洗浄便座を使わないと何回もおしりを拭かなければならず、そのせいで痔になることもあったんです。でも今は、洗浄便座を使わないでも1回できれいに拭き取れるのですごく快適です」
こうした「介護脱毛」を希望する人は年々、増加傾向にある。
医療脱毛専門院「リゼクリニック」が、40~50代の男女663人に実施したアンケート調査によると、女性は50.9%、男性も29.1%が「介護脱毛をしたいと考えている」と回答した(20年7月時点)。特に女性は、17年の調査時(23.0%)に比べ、27.9ポイント増加しており、ニーズの高まりがうかがえる。
特に40~50代の中年世代に関心が高いのは、「自分の親の介護体験が大きく影響している」と、同クリニック広報の下谷弥生さんは語る。
「例えば、ご両親の介護でおむつ交換をするときに、『アンダーヘアに便が付いてしまいうまく拭き取れない』『においがこもって不快感を感じる』といった経験を多くの方がされています。そのため自分が介護を受けるときに備えて、ご家族や介助者の手を煩わせないために脱毛される方が増えています」
リゼクリニックでは、介護脱毛のメリットとして、「排泄物の残余による炎症の防止」「おむつ交換の際のにおい軽減」「清拭の効率化」などを挙げている。医療(レーザー)脱毛の場合、無毛状態に近づくまでに、おおよそ1年半ほどの期間をかけて5~8回の施術を受ける必要がある。費用は全て自己負担(保険適用外)で、相場は10万~18万円ほどだ。
「注意していただきたいのは、レーザーは黒い色素に反応して照射されるため、白髪には効果がありません。完全に脱毛したい場合は、白髪が出る前に施術を始めるようにしてください」(下谷さん)
実際、脱毛の効果はどれほどあるのだろうか。
排泄ケアに関する相談・支援のほか、排泄ケア専門員(コンチネンスケアワーカー)の育成を行うNPO法人日本コンチネンス協会の梶原敦子さんは、「陰毛がないほうが、おむつがむれにくい、排泄物が拭き取りやすいということは、確かに言えます」と話す。