日本人の約15人に1人が罹患するといわれるうつ病。特徴的な症状は、個人差はありますが、例えば気分の落ち込みやほとんど全ての活動へのやる気の喪失などです。小川亮さん(37)は、大学医学部生のときにうつ病を発症し、大学に行けなくなりました。その後、病気と付き合いながら12年かかって大学を卒業。現在は心の健康を扱う研究所で研究員をしています。
「一口に精神疾患やうつ病と言っても体験は人それぞれ。うつ病からの回復とその後の道のりを歩みながら社会で暮らす当事者の話の一例として役に立つなら。そして、この記事をきっかけに、私以外の多様な当事者の生の声にもふれていただけたら」と、経験を話してくれました。前編・後編の2回に分けてお届けします。
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――うつ病を発症したのは、大学4年生のときだったそうですね。
はい。医師を目指して医学部で学んでいた4年生の11月でした。授業や実習で忙しかっただけでなく、朝は6時ごろから深夜1時か2時くらいまで勉強する日々が続き、疲れがたまってふとんから起き上がれなくなりました。立ち上がって家の中を歩く気力すらわかず、大学に行くことができなくなってしまったんですね。
大学へ行くことはおろか、頭がうまく働かなくてほんの1行の短いメールを打つことができなかったり、おかずができあがって冷蔵庫に入っているのにそれを食器に移す気力がなくてごはんが食べられなかったりと、今まで当たり前のようにできていたほんの小さなことを実行することすら難しくなってしまいました。それだけに、家族が食事や身の回りのことを助けてくれたのはとてもありがたかったです。
思えば、その2年くらい前からだんだん無理を重ねるようになって、土日や夏休みなどの長い休みは朝起きることができなかったり、目が覚めたら一日が終わっていたりということが増えてきていました。それでも休み明けはなんとか頑張って大学に行っていたのですが、だんだんと月曜日の授業に遅刻してしまったり、月曜は休んで火曜から行くようになったりといったことが増えてきて、ついにまったく行けなくなってしまったんですね。