今思えば、「失った習慣を立て直す」という課題は、健康であっても難しいことだと感じます。うつ病のときはエネルギーが低下していたのでなおさらかもしれませんが、「やはり自分はだめだからだ」と自分を責める気持ちになりがちでした。
それだけに、社会に戻っていく過程を、医療だけでなくいろいろな社会資源や教育環境などで手厚くサポートしていく形になれば、よりスムーズに社会になじむことができるかもしれないと感じています。
――精神疾患はこれから活躍しようとする若い世代で発症しやすいだけに、病気と言われてもなかなか受け入れられない方もいらっしゃいます。どう受け止めればいいか、ヒントをいただけないでしょうか?
難しい問いですし、「ひとつの決まった答え」があるわけではないと思いますので、あくまで一例として、自分の受け止め方についてお話ししますね。
自分自身がうつ病と付き合ううえで希望を感じるきっかけになったのは、「精神疾患を持ちつつ、あるいはそこから回復して、社会の中で自分が大事にしたいことを実現しながら生きている人たちがいる」ということや「適切な治療をすれば回復が可能な病気である」ということを知識として「知る」こと、そして実際の出会いを通じて「実感する」ことでした。
最初に通っていた精神科クリニックでボランティアをしたとき、精神疾患と付き合いながら、あるいはそこから回復して、家庭生活や趣味、仕事や学業など、自分の大切な活動をしながら暮らしている人たちにたくさん出会いました。
また、大学を卒業後に学んだ研究室で、精神疾患からの「リカバリー」という概念を知りました。自分は当事者としてこの言葉を「自分なりの回復」といったイメージでとらえていて、そうしたリカバリーの道を歩む人たちのお話を生で聞けたことにも、勇気づけられたように感じています。
そして「つらい」と感じたときには、「物事は必ず変化していく」ということに希望を見出すように心がけてきたかもしれません。例えば、回復していく過程では、山あり谷ありを繰り返しながら、全体として上昇していくというか、底が上がっていくイメージがあります。「今は調子が悪いけれど、ずっとこのままではなく、また良くなっていくだろう」と考えるように努めていました。でも自分ひとりだと、つらいときは視野が狭くなり、今の悪い状況で頭がいっぱいとなってしまって、なかなか難しかったのですが……。