※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 日本人の約15人に1人が罹患するといわれるうつ病。小川亮さん(37)は、大学医学部生のときにうつ病を発症し、大学に行けなくなりました。その後、病気と付き合いながら12年かかって大学を卒業。現在は心の健康を扱う研究所で研究員をしています。

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「一口に精神疾患やうつ病と言っても体験は人それぞれ。うつ病からの回復とその後の道のりを歩みながら社会で暮らす当事者の話の一例として役に立つなら。そして、この記事をきっかけに、私以外の多様な当事者の生の声にもふれていただけたら」と、経験を話してくれました。発症当時の様子やその後の経過を語ってもらった前編に続き、後編をお届けします。

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――うつ病になったことで進路を変更せざるをえなかったり、あきらめたりしたことはありますか?

 通常ならば医学部を卒業する前の1年間は医師国家試験と就職の準備をしますが、僕は卒業するだけで精いっぱいだったので、国家試験と就職の準備はあきらめました。主治医の先生や周りの方々と相談し、「今しかできないこと」を一つ選ぶとしたら卒業で、国家試験と就職は卒業した後でもできるね、という話になったんですね。一つずつ進めていきましょう、という方針でした。

 卒業後、2年かかって国家試験に合格し、今は心の健康を扱う研究所で研究員として働いています。

 自分の場合、将来を思い描く時点ですでにうつ病になっていたので、具体的に「なりたい何か」をあきらめたということはないかもしれません。病気になってからは長期的にどうしようと考えずに、目の前とちょっと先のことだけを考えるようにしてきました。うつ病で具合が悪いときは、ものの見方が悲観的になっていて、その状態で長期的なことを考えると悪いほうへ悪いほうへと想像が膨らんでしまっていましたから。

 そしてまた、「できなかったこと」より「できたこと」に目を向けるように努めていたかもしれません。ただ、なかなか「言うは易く行うは難し」だったのですが……。

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