今の進路はさまざまなめぐりあわせの結果ですが、自分が社会の中で働くことは無理だろうとあきらめていた時期も長かったので、こうした道に導いてくださった方々にとても感謝しています。
そして働くことに限らず、一人ひとりどんなことでもよいと思うのですが、そうした「自分にとっての価値ある何か」の存在は、「そのためにも心身の健康を保ちたい」と思う理由の一つになります。回復のための大きな力を与えてくれるだけでなく、かけがえのないよりどころになる気がしています。
――現在小川さんは、症状がよくなって普通の生活ができるようになった状態(寛解)を維持していらっしゃいます。病気を再燃させないために、どのようなことを心がけていますか?
「今の自分の状態」に気を配るようになりました。病気になる前はすごく疲れていることに気づかなくて、さらに無理を重ねてしまっていたんですね。頭の中や目の前が「するべきこと」の山でいっぱいにあふれていて、なかなか自分の状態にまで目が向かない、そんな感覚だったかもしれません。
ただ、うつ病と付き合いながら生活していく中で、自分の心や体が今どれくらい疲れているのか、どんなときに心身が疲れやすいのか、何をすれば疲れが回復するのかを知っておくことがとても大事だと感じるようになりました。知っておけば、気づいて対処することができますから。たとえば勉強していて疲れたら休憩する、今日は終わりにして明日に回す。そんな「自然な感覚」を取り戻すことを目指してきたのかもしれません。
――病状の回復以外に大切だと感じたことは?
症状が落ち着くことも大事ですが、落ち着いた状態で社会に戻っていく過程もとても大事だと思いました。病気になって一度社会から離れた後、回復して社会に戻っていく過程で、さまざまな課題に出合ったんですね。失った生活習慣を取り戻すとか、留年して1学年下の人たちに一人きりで加わるとか……。
特に、自分の場合は、生活習慣を立て直すのにとても苦労しました。うつ病になる前は特に何も考えず朝起きたら自動的に学校に行っていたんですね。でも、少し回復したけれどまだ大学を休んでいる時期は、朝起きてどう過ごせばいいかがわからず、迷っているうちに一日が終わってしまうこともしばしばでした。大学に行く練習として毎日近くの図書館に行ってみようと思っても、結局気力が湧かず何度も挫折し、落ち込んでしまうことも多かったです。