(左から)東京大学理事・副学長(国際・ダイバーシティ担当) 林香里さん(57):1963年生まれ。ロイター通信東京支局記者などを経て、2009年から東京大学大学院情報学環教授。21年4月から現職。専門はジャーナリズムとマスメディア研究/同志社大学学長 植木朝子さん(54):1967年生まれ。90年、お茶の水女子大学文教育学部国文学科卒業。2007年から同志社大学文学部国文学科教授。副学長を経て、20年4月から現職。専門は日本の中世歌謡・芸能[写真/林香里さん(朝日新聞社)、植木朝子さん(楠本涼)]
(左から)東京大学理事・副学長(国際・ダイバーシティ担当) 林香里さん(57):1963年生まれ。ロイター通信東京支局記者などを経て、2009年から東京大学大学院情報学環教授。21年4月から現職。専門はジャーナリズムとマスメディア研究/同志社大学学長 植木朝子さん(54):1967年生まれ。90年、お茶の水女子大学文教育学部国文学科卒業。2007年から同志社大学文学部国文学科教授。副学長を経て、20年4月から現職。専門は日本の中世歌謡・芸能[写真/林香里さん(朝日新聞社)、植木朝子さん(楠本涼)]
AERA 2021年6月21日号より
AERA 2021年6月21日号より

 ジェンダーギャップ指数が世界120位の日本で、大学が担う役割は大きい。大学の女性リーダーである同志社大学長・植木朝子さんと東大副学長・林香里さんの二人が、大学におけるジェンダーとダイバーシティーについて語り合った。AERA 2021年6月21日号から。

【グラフ】大学における女性の割合はこちら

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 今春、東京大学で新総長のもと立ち上がった執行部では、女性比率が「初めて半数を超え」話題を呼んだ。昨年、同志社大学でも150年近い歴史の中で「初の女性学長」が誕生。大学で女性リーダーがまだ少数派のなか、同志社大学の植木朝子学長と東京大学の林香里理事・副学長が、大学におけるジェンダーやダイバーシティーの課題についてリモートで対談した。

──「女性初の学長」「執行部の女性比率が初の過半数」と注目される状況についてどう思いますか。

植木:就任会見でも話しましたが、注目されることは有り難いのですが、女性が学長になることが当たり前になって、話題にならない時期がくることが望ましいと考えています。
林:注目される分、責任の重さを感じています。「女性が執行部の半数以上になった」ことが何を意味するのか。とにかく実行あるのみと思っています。

植木:何か失敗をしたときに、個人としてでなく、「女性だからダメなのではないか」と言われないか、プレッシャーを感じます。今はまだ過渡期なのだろうと思いますが。

■声届けられる者の責任

──企業などでも、女性が管理職や指導的地位に就いたときに、「女性」というバイアスのかかった見方をされることへのジレンマの声を多く聞きます。どう折り合いをつけてきましたか。

林:バイアスのかかった見方をされることは常に感じてきました。私は40代までは「自分は女性ではない。研究者なんだ」と、女性であることを禁欲的に抑えてきました。でも、50代に入ってやめました。私が女性であることは否定できませんし、東大の女性教授の比率は約1割です。10人集まると女性は私が1人だけという会議もしょっちゅうです。そうすると、マジョリティーである9人が「当たり前のこと」として気づいていないことが多々見えるのです。その違和感を口に出して伝えないといけないと思うようになりました。

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