今、芸能事務所が手掛ける新たな教育の形が注目されている。大手芸能事務所ワタナベエンターテインメントは、2015年に対面レッスンと通信制高校を組み合わせた「渡辺高等学院」を開校。今年4月にはすべての授業をネットで行うオンラインハイスクールも開校した。AERA 2021年6月21日号では、近年増えている「芸能事務所×高校」の動きを取り上げた。
【図】エイベックスやLDHも。高校と提携する芸能事務所はこちら
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渡辺高等学院に続く形で、通信制高校と提携してスクールを展開する芸能事務所が増えている。多彩なアーティストを抱えるエイベックス(19年4月~)、EXILEや三代目 J SOUL BROTHERSを擁するLDH(20年4月~)、爆笑問題ほか個性的な芸人やタレントが所属するタイタン(20年10月~)などが代表格だ。
そんななか、今年4月に開校したのが、日本のエンタメ界をリードする吉本興業の「吉本興業高等学院」だ。お笑い芸人をはじめ、俳優、ダンサー、脚本家、マネジャー、プロデューサー、デジタルクリエーターといった幅広い職種を目指すプログラムを用意。東京、大阪、沖縄にある校舎での対面レッスンに加え、オンライン授業も実施している。一般科目は滋慶学園高等学校(岡山)と提携。通信制課程を履修すれば高校卒業資格が得られる。
■「笑いの総合商社」も参入 メディアの変化に対応する
吉本興業は1982年開校のNSC(吉本総合芸能学院)を皮切りに、18年には沖縄ラフ&ピース専門学校を開校するなど、40年間にわたって教育分野に取り組んできた。いずれも対象は「18歳以上」だったが、吉本興業高等学院は15~17歳の生徒を受け入れる。約6千人の所属タレントを抱える事務所のノウハウを生かし、業界で活躍する人材を育成する。アカデミー事業を担当する坂内光夫取締役副社長(64)は設立の理由をこう語る。
「スポーツや将棋の世界には、すごく若くしてプロになる子がいます。ではなぜエンタメの世界は高校を出てから目指さないといけないのだろうと。以前から疑問に思っていたんです」