くら寿司でも、時期によって、「みかんブリ」や「みかんサーモン」「レモンひらまさ」などのフルーティーフィッシュのお寿司を販売しています。生魚が苦手なお子様や女性などにもとても人気があります。
現在は、レモンハマチのお寿司を販売しています。ほんのりとレモンの風味がして、暑い季節にはぴったりの爽やかな味わいです。
また、ハーブ鶏などと同じく、餌によって元々の臭いを軽減する取り組みも行っています。
ニザダイという魚(釣りをされる方には「サンノジ」と呼んだ方がわかりやすいでしょうか)は、海藻を食べるので、その身は磯臭く、苦手という方が多い魚です。
これからの季節、磯釣りなどの外道としてよく釣れ、定置網にもよく入ります。ですが、その独特の臭いから、市場などで流通することはほとんどなく、地元で食べられるか、捨てられるのがほとんどの魚です。
ところが、このニザダイに1週間から10日間、キャベツを食べさせると、その独特の臭いがほぼなくなるのです。
くら寿司でも昨年末に、そうして臭いを軽減したニザダイのお寿司を実験的に販売してみました。お客さまからは「きれいな白身で、マダイよりおいしいかも!」と大好評。現在、全国のお店での販売へ向けて準備中です。
余談になりますが、猛毒で知られるフグの毒も、生まれつき体内にあるものではなく、貝やヒトデ、海藻などに含まれる毒を体内に蓄積していくことで、あんなに強い毒を持つことになっているんです。
ということは、その特性をうまく利用して、毒のない餌だけでフグを育てると、毒のないフグを育てることも可能になるということになり、現在各地で研究が進んでいます。とは言っても、フグ肝を食べるのは勇気がいりますよね。
ほかにも、ご存じの方も多いと思いますが、サーモンのあの鮮やかなオレンジ色は、サーモンがエビやカニを食べることで、体内にアスタキサンチンという成分を蓄積して、色が変わったものなんです。
このように、魚は餌の影響を受けやすいと言えるかもしれません。今後はこうした特徴を利用して、さまざまな特徴を持つ魚を育てることができるかもしれませんね。
○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長
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