そして最終的に、これらのグループに幸福度に関するテストを受けてもらったところ、二つ目のグループで幸福度が上がった人は、三つ目のグループの約2倍いました。

 しかし驚くべきは、一つ目のグループは三つ目のグループの約3倍の人が幸せを感じやすくなっていたのです。

 ここで重要なのは、二つ目のグループは、自分が幸せだと感じることを実際にやっているのに対して、一つ目のグループは、ただ感謝しているだけ、という点です。

 このことから、「自分が幸せと感じること」を考えたり実行したりするよりも、まわりにある感謝すべきことに気づくことのほうが、幸せな気持ちになって精神的な落ち込みから回復し、メンタルを癒やすのに有効であることがわかります。

■メンタルが回復、睡眠の質の向上も

 また、他の大学の実験でも、不眠症の人や、抑うつ状態の人に、感謝の気持ちを日記につけてもらったところ、メンタルが回復して、睡眠の質が向上したという研究結果があります。

 思うに、特に育児中などは自分のやりたいことができないことが多く、自由に動けない状態にいるからこそ、家の中でも手軽にできて幸せな気持ちになれる「感謝さがし」は、理にかなった方法なのではないでしょうか。

 育児ノイローゼという言葉もあるように、育児中のママのメンタルは不安定になりがちで、気分が落ち込むこともあるでしょう。そんな気分が下がってしまいそうなときは、ぜひ、感謝日記を試してみてください。

 ちなみに自分は、感謝日記をつけてから、以前より小さなことで「ありがとう」と口にしやすくなった気がします。自分の気持ちが柔軟になって、感謝を見つける「感謝スキル」が上がったのかな、と思います。

 もし自分の気持ちが落ちてきているなと思ったら、身近な「ありがとう」を探して、スマホのスケジュール表に書いてみてください。

 いかに自分のまわりが感謝すべきことであふれているか、はっきり自覚できることでしょう。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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